「恋は盲目」とよく言いますが、今回話を聞いた新入社員もその一人です。大学時代に一目ぼれした女性を追い求めて就職した挙げ句、そのことがきっかけで人生を棒に振ったエピソードです。
◆あんな美人がこの世に存在するんだ

 某理系大学のロボット工学科に通っていた畠中新一さん(仮名・24歳)。小学校の時から「ロボットコンテスト」にあこがれ、それ以来「ロボットが恋人」な人生を歩んでいました。そんな畠中さんに、衝撃の瞬間が訪れます。

「いつものように、ゼミの友人とキャンパス内をふらふら歩いていると、中庭で“ミス・キャンパス・コンテスト”が開催されていました。全く興味はなかったのですが、時間があったので見に行くと、ステージの上には、まるでアイドルかモデルのような、自分史上最高に美人な女性がいたんです」

 その女性こそ、今後の人生を狂わせてしまうHさん(23歳)でした。畠中さんは友人たちと一緒に最前列まで移動して、スマホで動画撮影を行いました。

◆彼女と同じ会社に入りたい一心で…

 それ以来、畠中さんのロボットへの愛情は完全に消え失せ、Hさんのことで頭が埋め尽くされていきました。彼女の学部は文学部で、学年も同じ3年生。出身は鹿児島県。最初に入手できた情報はただそれだけでした。しかし、友人たちの協力もあり、徐々にさまざまな情報が入ってくるようになりました。

「数日前に駅前の雑貨店にいたとか、大学裏のスーパーでよく買い物をしているなど、みんな親切に情報を教えてくれて、友人たちには頭が上がりません。その中でも、一番有益だった情報は、某大手IT企業のA社を狙っているというものでした。数少ない女友達の人脈にも確認してみたのですが、どうやら、A社への憧れはかなり強いようでした」

 畠中さんは、それらの情報を信じ、全く視野に入れていなかったA社を志望したそうです。

◆念願が叶い、同じ会社に就職成功

 周りの友人は、おおむねエンジニアや研究所などに焦点をしぼる中、畠中さんは、Hさんと同じA社に迷わずエントリーし、4年生の夏前に無事内定を獲得しました。

「友人たちの情報によると、Hさんも念願叶い、A社から内定をもらったそうです。もう安堵というか、これからが勝負というか、入社前からワクワクとドキドキが止まりませんでした」

 それから数カ月の時間が経ち、畠中さんはスーツに身を包み入社式に臨みました。

「今から考えたら無謀とも言える自分の行動でした。人の噂や情報を頼りにこの会社へ就職したのですから。でも、入社式で、さらに美しくなっているHさんを見つけることができました」

◆衝撃の社内報に目まい

婚姻届 いざ業務が始まると、運が良いことに、畠中さんとHさんの部署は隣同士で、フロアを行き来する姿を目にすることが頻繁にありました。そんな幸せな毎日を過ごしている畠中さんに悲劇が訪れます。毎月総務が発行する「オンライン社内報」を見て、自分の目を疑いました。

「何気なく最新号に目を通したら、トップページの下にある『社員日記』という欄に『ご結婚おめでとうございます!いつまでもお幸せに』という見出しがあったんです。詳しく見てみると、そこには、直属の上司とHさんが結婚したという内容が記載されていました。その瞬間、目まいがして倒れそうになりました」

 まさか、自分の上司との結婚という事実に、しばらく椅子から立ち上がれなかった畠中さん。さらにその夜、友人から入った追加の情報で落胆が深まります。

「別に知りたくはなかったのですが、Hさんは1年生の時から結婚相手の上司と交際していたそうなんです。だから、何が何でもA社に入りたいと言っていたのでしょう。何も知らない私は、かなり大馬鹿な行動をとってしまいました。人生のやり直しが必要ですね」

 畠中さんは、その衝撃の事実が原因でメンタルに支障をきたし、会社を休みがちになりました。そしてその後、退職してしまったとのことです。

<TEXT/ベルクちゃん>

―[すぐに辞めた新入社員]―



【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営