―[メンズファッションバイヤーMB]―

 メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第478回目をよろしくお願いします。
「シアー」というトレンドご存じでしょうか?

 今回は2024年メンズに絶対に知っておいてほしい……いや、知らないと損する最新トレンド「シアー」を解説。抵抗のある人も取り入れやすいように格安品も交えて紹介します。

「シアー」知らないともう時代遅れになりますよ……?

◆そもそも「シアー」とはどこから来たのか?

イージーケアシアーオーバーサイズシャツ(長袖) 昨今、巷でよく見かけるようになったのが「シアー」。1〜2年前からレディースのトレンドとして挙がっていましたが、今年はメンズも含め大きく盛り上がりを見せています。

 トップブランドだけでなく、GUなどの量販店でも見られるようになり、いよいよ「トレンド」から「定番」になりつつある勢い。

 日本のメンズ市場では、特にシャツなどは「透け」を嫌う傾向があります。特に30代以上の大人の男性は「透け」に抵抗があるかと思いますが……そろそろシアーに抵抗があるのは「時代遅れ」になりかねません。

 それに何も「スケスケの服を着ろ!」「乳首を見せろ!」と言ってるのではないのでご安心を。丁寧に説明していきます。

◆60年台の最後、イブサンローランからスタートした「シースルー」

ウォッシャブルメッシュニットシャツ(5分袖) まずシアーの歴史から振り返ってみましょう。

 ファッショントレンドの流れを読み解くと70年台と2000年前後、そして2024年前後は同じトレンドを繰り返しています。

「トレンドは30年周期で繰り返す」なんてまことしやかに言われていますが、決して都市伝説などではございません。私を含む識者、研究者は30年周期による共通性を見事に指摘していますし信頼に足る説だと思います。

 シアーに関してもまったく同様で、60年台の最後、さらには2000年前後にトレンドがあったことをご存じでしょうか。名前こそ違うものの60年台最後は透け感のある洋服がトレンドになりましたが、きっかけはサンローランが打ち出した「シースルー・ルック」。

 さらに2000年前後にはiMacやゲームボーイ、プレイステーション、たまごっちなどあらゆるものが透けたパッケージになった「スケルトン」ブームが到来しています。さらに時間が経過し、現在は「シアー」トレンドが再来してきたというわけ。

 アパレルは同じトレンドを繰り返すわけですが、それをいかに新しく見せるか必死です。同じようなトレンドがリバイバルしても必ず言葉を変えて表現します。「シースルー→スケルトン→シアー」と呼び方を変えて新しいものと思わせる手口ですね。

 同じく70年台と2000年ごろにトレンドだった首元が切り替えてあるTシャツ「トリムT」も、現在では「リンガーネックT」と名前が変わっています。

 ともあれ、こうして繰り返されるトレンドの中で、今年からはメンズもシアーが人気。しかしながら2024年のシアートレンドは今までのシースルーやスケルトンと比べると、透け感を抑えた提案が多く、比較的取り入れやすいものとなっています。

◆「シアー」の目的は「透けさせる」ことだけにあらず
・イージーケアシアーオーバーサイズシャツ(長袖) 2290円

 まずおすすめしたいのがGUのシアーオーバーサイズシャツ。実は2年ほど前から展開しロングセラーになっているこちら。今までのスケルトントレンドなどでは「透け透け上等!」でしたが、今年は自然な透け感が人気。

 こちらも透ける……というよりもやや薄手の生地感で上品さを感じるシャツ……というくらい。わずかに中のインナーが透ける程度でさほど気になりません。これなら大人も抵抗なく取り入れられるでしょう。

「なんでトレンドだからって、わざわざ取り入れなきゃいけないの?」と思うかもしれませんが、これがまったく普通のシャツと違うんです。透け感を気にして生地を選べば、当然、地厚になることも多く、エアリーな雰囲気を出すことができません。

 メンズだとどこかビジネスシャツライクに見えてしまうことも。こちらのシアーシャツは「透けさせること」よりも「軽くて光沢があり、風を受けてエアリーに動く高級感ある生地」として作られているようです。

 これはぜひ騙されたと思って手に取ってみてください。今までのシャツとまったく違って、光沢感とヒラヒラ動くラグジュアリーな印象がたまらない。それでいてポリエステル素材なのでノンアイロンでガンガン使える。

 さらに薄手のため、通気性もよく、短パンと合わせれば真夏でも問題なく着用できる……活用時期の長さも魅力なのです。

◆「シアー」はオジサンにこそ着てほしい
・ウォッシャブルメッシュニットシャツ(5分袖) 2290円

 次におすすめなのがこちらのニットシャツ。

 ニットはもともと透け感のある素材が多いですね、編み物ですから。透け感に抵抗があるとこうした「ニットシャツ」も展開しにくいわけですが……今年はトレンドからかGUはこんな商品を出しているのです。

 ラグジュアリーではよく見る編み物ニットのシャツ。複雑な編み地はコストもかかり高級な雰囲気を作るもの、GUのこちらも価格こそ2000円台と手頃ですが、とても安物と思えません。ニットの編み地によるラグジュアリーな印象、透け感のある雰囲気が色っぽく感じます。

 シアーなどの新しいトレンドは「若者だけのものでしょ?」とお思いかもしれませんが、むしろニットシャツはゼニアなどのイタリアンブランドのほうがよく見かけませんか? 30〜40代向けのラグジュアリーなスタイリングにとてもよくなじみます。

 黒のニットシャツに白スラックスを合わせれば、イタリア親父の完成。シアーは決して若者だけのものではないのです。

◆インナーには快適なポンチのタンクトップで
・ドライポンチロングタンクトップ 1290円

「でも、多少なりとも透けるわけで……インナーには何を着ればいいの?」とお思いでしょう。

 そこでおすすめがこちらのタンクトップ。GU夏の人気素材、ドライポンチで作られたタンクトップです。光沢のある表情で透けたとて、下着には絶対に見えません。

 シルキータッチで色っぽい雰囲気、シアーに合わせるなら間違いなくこちらがおすすめです。

ドライポンチロングタンクトップ 見た目だけでなく、裏が吸水速乾の素材になっておりさらに接触冷感もある。日本の高温多湿の夏で重ね着なんて……と思うかもしれませんが、これならタンク+シャツで組み合わせても不快感は少なめ。迷ったらこちらがおすすめです。

 以上、2024年注目のメンズトレンド「シアー」について、おすすめ品とともに解説させていただきました。

 今回買いやすいアイテムとしてGUを挙げていますが、興味があればハイブランドやデザイナーズなどさらにディープゾーンも覗いてみてください。

―[メンズファッションバイヤーMB]―



【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)