ソフトバンクを徹底取材する「西スポWEB OTTO!」、と球団公式チャンネル「ホークスTV」によるコラボ企画「鷹番が聞く!解説しちゃOTTO」。ソフトバンクの選手自らがあの試合、あのシーンを詳しく解説してくれます。第2回は新加入でソフトバンクの新たな4番打者として活躍を続ける山川穂高内野手(32)が登場します。前編は3、4月に放った6本塁打すべてを振り返ってもらいました。(聞き手・構成=小畑大悟、鬼塚淳乃介)
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―第1号はオリックスとの3月29日の開幕戦で宮城から勝ち越しの一打。同点で7回先頭での場面だったが打席での意識は。
「前の打席に三振していたんで、しっかり前に打ち返していこうっていうのはありましたね」
―外角のスライダーを2球見逃してから、3球目の直球を捉えた。
「配球的な部分はちょっとあんまりわかんないですけど、来た球を打って感じですけどね。そもそも宮城がちょっと良すぎるぐらいいいので。今のパリーグで言ったら宮城、佐々木朗希、今井、(高橋)光成、隅田もそうだし、あと山下とか。あの辺のクラスのピッチャーっていうのは僕がどれだけ調子良くても、すっからかんにされる可能性があるというか。もう本当に当たらないときが出てくる。そういう意味ではマジでまぐれです。もうほんとに、まぐれだなって思うぐらいのホームランですね」
―移籍1年目の初戦など、様々な思いがあった中での一発だった。
「そうですね。でも、その思いというのは、漫画みたいにここ絶対打ってやるとか、そういうのっていうのはあんまり起きない。自分のやることを淡々とやるっていう方が今強いですね。これはまぐれですね」
―元同僚の捕手森との駆け引きもあった。
「基本的に僕はキャッチャーとあんまり対戦しないようにしていて。僕はそれをやっちゃうと後手に回っちゃう可能性が高いので。でも、その中でもやっぱり森は僕のことよく知ってるでしょうし、そういう意味では嫌ですけど」
―見逃し三振に倒れた2打席目は全球直球。こう来たかと思った。
「そういうのをあんまりしたくないんですけど、やっぱそうなっちゃった打席。それがあった上で、やっぱりダメだなっていうので、臨んだ打席ではあったかなと思います」
―第2号は4月13日西武戦での満塁本塁打。第4打席で水上から2球シュートで空振りした後のスライダーだった。
「これはよく覚えてますけど、(水上は)シュートとスライダーの左右の使い分けで抑えてくるピッチャーってのは分かっていましたけど。この2球空振りした時、終わったと思いましたけどね。もう1回多分シュート投げられてたら無理じゃないですかね。シュート投げられるか、もしくは外のスライダーがもうちょっと低めにちゃんと来ていたら抑えられてたんでしょう、っていう打席だと思います」
―打てるところに来た。
「結局僕慌てているんですよ、この打席。やばいやばいってなっている状況。そんなに調子が良くないですし。最終的にこれ打った球、ボール球なんですけど、こんなところがホームランになってる時点でそんなにいいわけはないんで。まぐれです。もう本当にそこしか打てないところなので。でも、野球やってる中でこういうのって結構起こるんですよ。もうダメだこりゃって思っている時に、なぜかそこしか打てないっていうところにボールが来たりとか。当たった時、ほんとに当たったっていうぐらいの感じでしたね」
―表情からもよかったという感情が伝わってきた。
「これはよかったっすね。こういうのはたまにラッキーなのが起こる時があるので。これはラッキーですね」
―第3号は第2号に続く打席での満塁本塁打となった。展開的に楽ではあった。
「ここはちょっと余裕がありましたね」
―2打席連続満塁弾は意識した。
「全くしてないです。してないですけど、結局さっきの打席でホームラン打ったことによる、心の余裕って言い方したらあれなんですけど。何か多分ホームラン打った時って感覚が残ったり、脳内から何かが出るっていうのが多分起こるんでしょう。だからこそ連発っていうのがあるんで。ここの時はもう打てると思ってました」
―完璧な当たりだった。
「こっちの方がやっぱちゃんと、ちゃんと打ってます。間違いなくこれはいいです。これはちゃんと打つべくして打ったホームランなのかなと思います」
「4月30日のホームランの方がいいですよね」…次ページ
―状態も気持ち的にもよかった。
「そうとも限らない。あんまり調子良くない時でもホームラン連発する時って結構あったりするんで。そういう意味ではちょっと飛びますけど、4月30日のホームランの方がいいですよね」
―順番前後してその同日楽天戦の第6号。高めに浮いたカットボールを中越えさせた。
「今年の中で1番いいです」
―その理由は。
「いい姿勢で立てているので、いい回転ができいるんです。いい姿勢で立てていると、力の入れ具合も良くなっていくので。よく当たる時に100パーセントの力を出したいと言って、みんながリラックスとかそういう言葉で結構簡単に言うなって思うんですけど。リラックスが本当の意味でリラックスできるのってバランスが良くないとできないので。ただできています」
―我々が姿勢の違いが分かる部分はどこか。
「映像で見たら分からないレベルだと思います。それぐらいバッティングって繊細ですし。それを1試合、2試合続けるのってそんな難しくないですけど。球場が毎回変わるので、その球場によっての見え方とかも含めて、その中でやっぱ継続していくっていうのは非常に難しいかなと思うので。やってみてください」
―球場ごとに立ち方は違う。
「僕は球場によって打ち方はあると思います。西武(ベルーナ)ドームで打つ打ち方と、(みずほ)ペイペイ(ドーム)で打つ打ち方と、(ZOZO)マリンで打つ打ち方とっていうのは僕はあると思います」
―戻って4月19日オリックス戦での第4号3ラン。方向的にも良かったと語っていた。
「これはもう文句なしというか、かなりいいと思います」
―名前を挙げていた山下投手から。
「山下舜平大がこの時あまり調子よくなかった(4回8失点)ですよね。というのもありますけど。やっぱりスイングの軌道とか、打っているこのフォルムを見る感じでは、このホームランはすごくいいと思います」
―山下の武器である直球を打てた。
「それもありますね。でも飛んでる方向がいいです」
方向は左中間が一番いい。
「左中間が1番。僕のバッティングとしては左中間が1番いいなと思いますね」
―どういう部分でいいのか。
「バットがちゃんと面が向いてる状態、ボールにちゃんと当たってる状態じゃないと、左中間とかセンターには飛ばない。それをするのって結構難しい。速い球をとかいろんな球が来る中で、そうやって出していくっていうのは難しいんですけど。それが理想的なので言うと、やっぱちょっと詰まって左中間に飛ばしたい。面を向けて、ちょっと詰まった状態で打てる時っていうのは結構量産できる時」
―そういう意味ではいい形で打てた。
「これ結構これ先っぽで打ってるんで、でもそれは操作できないので。ホームランとしては良かったかな」
―4月25日のロッテ戦での第5号は先制2ラン。三振からの2打席目で逆方向に飛ばした。
「これは打席の中での見送り方とかも含めていいです。かなりいい。落ち着いてできてると思います」
―見送り方は完全に見送れる方がいい。
「ストライクゾーンって実際そんな広くないので。ストライクゾーンが広がっていったり、内側にも外側にも高低も含めて広がっていって、打てると思っているゾーンがちょっと広くなりすぎる時っていうのは、もちろん数字としては良くならないですけど。でもテレビで見てたら結構簡単なんですけど、ストライクだけ振ればいいじゃんって思うんですけど。でもはたから見ている人の意見と僕が実際やる感覚っていうのもまるっきり違うので。自分がいい感覚でちゃんとストライクゾーンの球をセンター中心に打ち返せるようになる時は、姿勢が良かったりとか、力の配分が良かったりとか。そういうのが大体比例することが多いので。そういう意味では単純ではないなと思います」
―逆方向へ伸びたのにも根拠がある。
「ちゃんと当たれば別に反対方向でも入るので。これはいい打ち方ではありますけど、その後の打席にすぐいい成績が出ない時っていうのは、やっぱりまだちょっと何かがずれているので。完璧を求めれば求めるほど、もうちょっとこうかなっていうのは、ホームランを打ちながらでもあります」
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