イヤイヤ期や反抗的な子どもの態度に頭を抱えている親御さんは多いでしょう。叱ることでさらに反抗され、事態が悪化するケースも珍しくありません。親子ともにストレスをためないために、効果的な対応とは? 一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカさんが心理学に基づいた方法を教えます。
※本稿は、 竹内エリカ著『心理学に基づいた 0歳から12歳 やる気のない子が一気に変わる「すごい一言」』(KADOKAWA)から、一部抜粋・編集したものです。
子どもの反抗に困ったとき
× イヤじゃないの! 我慢しなさい
〇 イヤなのね。少しだけ頑張ろう
・感情を受け止め、行動を正す
2歳くらいの子どものイヤイヤ期。何に対しても「イヤ!」と言うものですから、親としても「イヤじゃないでしょ」と負けてはいられません。けれども、子どもはさらに泣き叫び「ヤダヤダヤダ〜!」とひっくり返って抵抗し、結果、親子ともに消耗しきってしまうということもあるでしょう。
そんな子どものイヤイヤ期には「感情を受け止め、行動を正す」ということを意識してください。
心理学で「レジリエンス」という考え方があります。レジリエンスとは、「逆境や困難から立ち直る力」のことで、「心のしなやかさ」と訳されることもあります。子どもの「イヤイヤ」や反抗・抵抗といったストレスに真正面から立ち向かうのではなく、ストレスをふわっと受け流すのです。
「馬の耳に念仏」ということわざがありますね。馬にありがたい念仏を聞かせても無駄である。そこから転じて、いくら意見しても全く効き目のないことの例えに使われます。いくら反抗しても効き目はないと子どもが思うように、親御さんが軽くかわすための方法が「感情を受け止め、行動を正す」という姿勢です。
子どもが「イヤ!」と言ったら、「イヤじゃないの!」と言い返さず、「イヤなのね」と気持ちをさらっと受け止めてください。否定されると反抗したくなる心理が生じます。一旦受け止めることで、反抗心が低くなるのです。
そして行動だけを正してください。「ごはんを食べたくないのね」「わかったわ」「一口だけ食べましょう」といった具合です。
ここでポイントなのが、まず、感情は受け止めますが行動はしっかりと正すこと。多少譲歩してもかまいませんが、一貫性を持たせることが重要です。そして、イライラしても、重く受け止めすぎないことも大切です。さらっと軽く受け流してみてくださいね。
0〜2歳への声かけ
イヤイヤ期で注意したいのが、「感情を否定して行動を受け入れる」こと。子どもが「イヤ」と言うと、「イヤじゃないの」と感情を否定してしまい、そのあとあまりに子どもがイヤイヤ言うものだから「仕方ないわね。今日だけよ」と行動を受け入れてしまうのです。
そうではなく、「イヤだったのね」「かなしいのね」「悔しいのね」と感情を受け止めてから、「でも頑張りましょう」と行動を正してあげてください。
3〜6歳への声かけ
このくらいの年齢でも、イヤイヤ期のようなものがあります。ただし、言葉を使う力が身についているので、「ママ嫌い」「あっち行って」など親を傷つける言葉を使うことがあります。
「ママに対してその言葉は何よ」と反応したくなりますが、それで3〜6歳への声かけは子どもの思うツボ。「これは効き目のある言葉なんだ」と思い、繰り返すようになります。
こんなときは「そんなこと言われたらさみしいわ」と、さらっと受け止めながら、それはひどい言葉だということは伝え、「それじゃあこうしましょうね」と本題に入ってしっかり指導しましょう。子どもの攻撃には乗らないことです。
7〜12歳への声かけ
学校から帰ってきたあと、「遊びに行くのは宿題を終わらせてから」と決めているご家庭もありますね。しかし、実際子どもは宿題をほったらかして遊びに行こうとします。
そこで「宿題やったの?」と聞いても「あとでやる。今はやりたくない」と言ったりします。親としては「宿題をやってから行く約束でしょ」と言いたくなりますが、子どもが「はい、わかりました」と言うはずがないですね。
そんなときは「そうなの、やりたくないのね。じゃあいつやるの?」と聞いてみましょう。さらりと流しつつ、やりたくないという感情ではなく、行動に焦点を当ててみてください。
子どもの将来について不安を抱いたとき
× この子が将来問題を起こしたらどうしよう
〇 問題が起こらないように対策しよう
・子育てにおいて心配事の97%は起こらない
子育てをしていると不安になることがあります。どんな子も、ずっといい子であるはずがありません。成長の過程で時にはいい子でもあり、時には悪い子でもありえるのです。
どんな親御さんでも「私の育て方がいけなかったのかしら」「このまま大きくなったら困らないかしら」などと考えてしまったことはあるのではないでしょうか?
けれども、子どももひとりの人間ですから、たくさんのことを経験しながら試行錯誤して成長していくのは当然のこと。不安になったときこそ「どうしよう」から「こうしてみよう」へ意識を切り替えてみてください。
私たちは子育てをするなかで「今日はあまり食欲がなかったな」「明日の朝はちゃんと起きられるかな」「学校で友達と仲よくしているかな」と、小さな心配から大きな不安まで抱えてしまいます。今この瞬間だけでなく、過去を回想したり未来について思いをめぐらせたりすることも多くあります。
こうした状態を「マインド・ワンダリング(心の迷走)」と言います。なんと私たちは、生活時間の47%もの時間を、このマインド・ワンダリングに費やしているとも言われているのです。
ここでお伝えしたいのが、心配事の97%は実際には起こらないということです。シンシナティ大学のロバート・リーヒ博士による研究には、心配性の人が抱いた不安の85%は実際には起こらず、さらに残りの12%は対策をすることで回避ができるという内容があります。
つまり、97%はなんとかなるということですね。心配事があっても深く考え過ぎず、しっかりと対策をしたうえで前向きに捉えたいものです。繰り返しますが、不安に思うことの85%は起こりません。そしてあなたが本稿を読んでいる時点で、さらに12%のことも起こらないでしょう。
0〜2歳を持つ親御さん自身への声かけ
「子どもがごはんを食べないんです」というお悩みをよく聞きます。今の日本で、飢餓になる子どもというのはあまりいません。バランスよく多くの食材を食べさせたいと思うかもしれませんが、味噌汁とおにぎりでも大丈夫です。
食べないと言っても、何食も続けて食べないということはそうそうなく、何かしらで栄養はとれているはずです。「ごはんは全部食べきらなくても大丈夫」と考えてみてください。
3〜6歳を持つ親御さん自身への声かけ
トイレトレーニングをしていて、つい強く叱ってしまうこともあるかと思います。「早くおむつがとれるようにならなきゃ」「入園までにできるようにならなきゃ」と焦ってしまうかもしれません。
ですが、考えてみてください。大人になってトイレで用を足せない人はそう多くはいませんね。もちろんトレーニングをすることでできるようになるので、それ自体はやった方がいいのですが、不安になりすぎる必要はまったくありません。「すぐトイレでできるようにならなくても大丈夫」と、焦らず見守ってあげましょう。
7〜12歳を持つ親御さん自身への声かけ
小学校に入学したばかりの子どもについてよく聞くお悩みが「じっと座っていられない」というもの。先生から「授業中も立ち歩いてしまいます」「集中できていないです」と報告を受けると心配になりますね。
ですが、子どもがじっとしていられないのは当然のこと。小学校には刺激があるし、幼稚園や保育園ではずっと遊んでいられたのに、今では1日中座らされる毎日。すぐにうまくいかないのは当たり前です。
そのような状態は、9歳・10歳頃になると徐々に落ち着いてきます。不安になりすぎず、「先月より今月の方がちょっとよくなったな」「1年生のときより2年生のときの方がよくなったな」と少しの成長を見守ってあげましょう。