厚生労働省が公表した最新の「職場のハラスメントに関する実態調査」結果によると、過去3年間にカスタマーハラスメント(顧客などからの著しい迷惑行為)について相談があった企業割合が、前回調査(令和2年度実施)に比べて増加した(関連記事=3割でカスハラ相談 企業における実績調べる 厚労省)。相談件数が増えているとした企業は2割強で、こちらも前回を上回った。

 カスハラは、昨年9月に改正された精神障害の労災認定基準において、審査時に考慮する心理的負荷の評価項目の1つとして追加された。顧客から人格・人間性を否定されるような暴言を執拗に受けて精神疾患が発症した場合には、労災と認定される恐れがあり、企業は安全配慮義務を問われかねない。

 従業員が被害について相談するケースが増えるなか、企業は担当者1人が被害を受け続けることがないよう、あらかじめ組織的な対処方針を決め、相談があった際に迅速に対応できるようにしたい。

 前述の厚労省調査では、過去3年間に相談を受けた企業割合は27.9%で、前回調査の19.5%から8ポイント程度増加。相談事案のなかでカスハラに該当する事例があった企業は86.8%に上る。

 該当事例の内容は、「継続的な、執拗な言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)」が72.1%で最も多く、以下、「威圧的な言動」52.2%、「精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言、土下座の要求)」44.7%と続く。

 カスハラで被った損害では、6割の企業が従業員の意欲・エンゲージメントの低下を訴えた。休職・離職につながった企業も2割を超える。

 カスハラについて相談を受けたことがある企業の割合は、人手不足が顕著な「医療、福祉」や「宿泊業、飲食サービス業」などで高い。適切な対応を取らなければ、離職者などの発生によって人手不足に拍車がかかる恐れもある。

 人格や人間性を否定する暴言や暴力行為といった迷惑行為が発生した場合に、すぐに現場責任者に相談するなどして引き継げる体制を整えることが重要だ。組織的な体制を構築したうえで、従業員への教育・研修を実施し、社内対応ルールを徹底してほしい。