立川のサンサンロード沿いで2016年から営業する『Adam’s awesome PIE(アダムス オーサム パイ)』は、創業約70年の老舗青果店が直営するカフェダイニングだ。名物のアップルパイをはじめ、焼きりんご入りのハンバーガーなど本格派のアメリカンフードで、旬のりんごや野菜など青果店ならではのおいしさを存分に堪能できる。

一軒のリンゴ問屋から歴史がスタート

店内に一歩入るだけでアメリカンな雰囲気に包まれる。
店内に一歩入るだけでアメリカンな雰囲気に包まれる。

『Adam’s awesome PIE』は、立川駅からサンサンロードを10分ほど歩いた場所にある、ビルの2階に店舗を構えている。店内には、ロゴマークやイラストなど、どこを見てもりんごモチーフのものであふれている。

同店の歴史は、長野にある一軒のりんご問屋から始まった。初代社長が営んでいた問屋は、まだ全国的に長野のりんごが有名ではなかった時代に、初めて東京の神田市場へ信州りんごを卸した。信州りんごのおいしさを関東に広めながら、やがて果物だけではなく野菜を扱う青果店へと発展。その後、現社長の根津盛行さんに代替わりし、さらに青果物の付加価値を高められるような店を開くべく2016年に『アダムス オーサム パイ』をオープンした。

窓際には“リンゴの木”をイメージした柱がある。
窓際には“リンゴの木”をイメージした柱がある。

店のコンセプトを決めるときに考えたのは、“立川とリンゴ”の共通点。そこで立川について調べていくと、かつて立川には米軍基地があり、管轄していたのがカリフォルニア州だった。さらにカリフォルニアにはアップルパイで町おこしをしている「ジュリアン」という町があることがわかり、アメリカ×リンゴをテーマにした店づくりを始めた。

そして誕生したのが、カリフォルニアの青い空をイメージした天井の下、アメリカンテイストのインテリアが配されたおしゃれなカフェ空間。アーティスティックで個性的な空間は、ドラマやCMのロケ地に何度も使われている。

広々としたテラス席も大人気!
広々としたテラス席も大人気!

オリジナルバーガーは甘酸っぱいりんごが絶妙なアクセントに!

フライドポテト、ドリンク付きのバーガーセット1380円。
フライドポテト、ドリンク付きのバーガーセット1380円。

同店では、リンゴを活かした多彩なメニューが味わえる。その一つが、代表的なフードメニューのAdam’sバーガーだ。意外性抜群な組み合わせだが、リンゴ×アメリカをテーマにしたこの店ならではのバーガーといえる。

全粒粉入りの特注バンズにサンドされているのは、こんがりとした焼きりんごのスライス。それに牛100%で作る自慢のパテ、アボカド、トマト、レタスという盛りだくさんの内容だ。さらには、オリジナルソースにもりんごが入っているという徹底ぶりで、リンゴのおいしさを存分に味わえる。

牛100%のパテは、鉄板でプレスして焼くスマッシュタイプ。カリッと香ばしく、牛肉の旨味がギュッと凝縮されている。そこに、焼きりんごの酸味がピクルスのようなアクセントを与えてくれる。主張しすぎない甘さなので、ジューシーなパテの旨味を邪魔せず、むしろまろやかに包み込んでくれて心地よい。

一見バラバラな具材たちだが、熟成したまろやかなアボカドの風味、フレッシュな野菜たち、バンズの香ばしさ……全てを一気に頬張るといっそう味わい深く、不思議な一体感がある。どれか一つ抜けても物足りない、計算され尽くした黄金バランスだ。これは一度食べると、ハンバーガーのイメージに革命が起こるかも?

しっとり&もっちり食感! 店内で焼く名物アップルパイ

四角くボリューミーな名物パイ! Adam’s オリジナルアップルパイ550円(ドリンク付きは950円)。
四角くボリューミーな名物パイ! Adam’s オリジナルアップルパイ550円(ドリンク付きは950円)。

パイ類は、スイーツ系とセイボリー系を合わせて常時10種類ほどがそろっている。

その中でも創業当時から店の名物となっているのが、Adam’s オリジナルアップルパイだ。日本でよく見かけるサクサクとした生地のアップルパイとは異なり、“練りパイ”と呼ばれるしっとりとした生地のアメリカンスタイルで作っている。そして、気になる四角い形は“リンゴの木箱”をイメージしているのだとか。そんな青果店ならではの発想もユニークだ。

アップルパイは、リンゴのカットからパイを焼き上げるまで全て店内で仕込んでいるため、できたてのおいしさを味わえる。

生地をフォークで割ってみると、クッキーのようにサクッとした手ごたえがあった。そして生地の断面には、びっしりと詰まったりんご! このビジュアルだけでたまらない。

Adam’s オリジナルアップルパイには、酸味が強い「紅玉」を採用。長野県産や青森県産など、その時季に一番おいしい旬の産地のリンゴを毎朝市場で目利きし、仕入れている。生地の材料には風味控えめな全粒粉を使用したり、リンゴをブラウンシュガーと合わせて焼いたりすることで、紅玉特有の香りと食感を最大限に引き出している。

しっとり、もちもちとした生地は歯応えが楽しい。アメリカンスタイルのパイということで濃厚な甘さを想像していたが、全体的に甘さは控えめでとても食べやすい。りんごの酸味と爽やかな甘さが引き立っていて、ボリューミーな見た目とは裏腹に、ぺろりと完食してしまった。上品な甘さなので、老若男女問わず、好みを選ばないパイだろう。

パイと6〜8種類の野菜のサラダバーが付いたセット1380円のほか、平日限定でなんとパイの食べ放題(前日までに要予約、1時間2000円)もある。いろんなパイの楽しみ方ができるのも醍醐味。『Adam’s awesome PIE』に足を運んだら、老舗青果店ならではの果物や野菜のおいしさを楽しもう!

取材・文・撮影=稲垣恵美

稲垣恵美
ライター
北海道出身のお散歩・お出かけ好きライター。晴れた日はどこかに出かけたくてソワソワしだす。フリーペーパーの出版社勤務後、現在はフリーランスで活動中。