福岡県朝倉市への移住定住を促す新たな拠点「コンネアサクラ」が4月22日、同市甘木にオープンしました。気軽に立ち寄れる場所を目指し、常駐の職員らが様々な相談に応じます。イベントスペースでは「朝倉ファン」を増やす催しを開催します。


「いいところ」を発信!

 「人と人をつなぐ交流の場、市の魅力を広める拠点として運営していきます」。21日に行われた式典で、朝倉市の林裕二市長が力強く語りました。

 施設の名称には「朝倉来んねー!良いとこよ!」の思いが込められています。一般公募に144件が寄せられ、広島県から移住した小野菜美子さんの案が選ばれました。式典では、林市長と地域おこし協力隊員、小野さんらがテープカットに臨みました。

 この日は、市の魅力発信アンバサダーの委嘱状も交付されました。アンバサダーに就いたのは、朝倉ネタが持ち味の地元出身芸人・朝倉幸男さん、ブログで朝倉地域のグルメを紹介する甘城卓也さん、老舗畳店の4代目でラッパーの徳田直弘さん、ライブペイントやモデルなどで活躍するアーティスト・dollyさんら地元ゆかりの9人です。

 9人のSNSのフォロワー数は、合わせて23万人以上になり、それぞれの得意分野で朝倉市の魅力をPRしていきます。林市長は「地域の元気な姿を全国に発信していきたい」と、アンバサダーの活躍に期待しています。


移住定住いつでも対応

 甘木鉄道の甘木駅前に完成した施設は、プレハブ2階建て、延べ床面積77平方メートル。ふるさと納税の寄付金を充て、総工費3000万円で建設しました。

 1階にはテーブルやカウンターがあり、平日の9〜17時に、市職員と地域おこし協力隊員が移住希望者の相談に乗ります。空き家バンクの問い合わせや、移住体験ができる「お試し居住」の受け付けなども行います。事前に電話(0946‐28‐8855)で予約すれば、土日・祝日も対応します。

 近年は移住を検討する人が増え、お試し居住は特に人気があるそうです。市が管理する同市秋月の一軒家で3日〜2週間過ごせ、協力隊員の栗林直人さんは「水がきれいだと実感できると思います。これからホタルの時期になりますね」と話します。

 2階のイベントスペースには、芝生をイメージした緑色のカーペットが敷かれています。地元高校生が廃材で作った木製テーブル、折りたたみのローチェアがあり、キャンプ場のような雰囲気です。

 ここでは栗林さんらが、移住した人と移住を考えている人の交流会を企画したり、大工さんらを招いて空き家活用術の講座を開いたりする予定です。


市役所から飛び出して

 「市役所には寄りづらくても、こういうスペースだと気軽に来ていただけるんじゃないかな」。市シティプロモーション課の田中岳大係長が、施設の模型を手に説明してくれました。模型は建設に関わる関係者へのプレゼンのために自作したそうです。

 コンネアサクラは、市の新規事業を職員から募る制度で田中係長の案が採用され、実現しました。駅から1キロ以上離れた市役所を飛び出し、まちなかで移住定住の施策に取り組むアイデアです。交流拠点としても活用し、地域コミュニティーの活性化にも力を入れます。

 2020年の国勢調査によると、同市の人口は高齢化などにより10年間で約5万6000人から約5万人に減りました。市内には三つの県立高校があるものの、卒業と同時に地元を離れる若者が多く、田中係長は「子どもたちが大人になったとき、地元に戻りたいと思ってもらえるようにしたい」と考えています。

 そこで市は、地元の若者らに、まちづくりへの関心をもってもらおうと、市民参加型ワークショップなどをコンネアサクラで始めます。まず、地域を盛り上げるアイデアを募り、市や住民が一体になって実現をサポートする「CANOW PROJECT(かなうプロジェクト)」を5月以降にスタートする予定です。

 また6月以降は、プロの映像作家らの指導を受けて市民クリエイターを養成する講座も計画しています。イベントスペースを活用して、地域の魅力を高める取り組みを展開していくそうで、田中係長は「駅前なら通勤や通学の際に立ち寄ってもらえると思う。コンネアサクラから『朝倉のファン』を増やしていきたい」と話します。