実家の子ども部屋に大人になっても住み続けている中高年の男性を指す「子ども部屋おじさん」というネットスラング。すっかり世の中に浸透しつつあるワードだが、先日、このスラングのそもそもの概念を覆すような投稿がXに投下され、大きな話題となった。

レトロおもちゃが盛りだくさんの夢の部屋

「じゃあ何スか オレのこの部屋も子ども部屋おじさん言うンすか」。そういって自身の部屋をXに投稿したのは20代男性、たにす-TANISU-さん(@SWM_2600a)。

部屋にはところ狭しと、かつてゲームセンターに置かれていた懐かしのメダルゲームの筐体がおかれ、壁にはお面やファミコンのゲームカセットなどレトログッズがびっしり。

子ども部屋というより、“子どもが喜びそうな部屋”だ。特に、30〜40代には思い切り突き刺さりそうなラインナップなのだが、たにすさん自身は20代。一体なぜ、この部屋を作ろうと思ったのだろうか。

「小さな頃から収集癖の傾向はあったのですが、本格的にいろいろと集めるようになったのは記憶の限り、小2の頃から。ニンテンドーDS用ソフト『ナムコミュージアムDS』に出会ったことがきっかけだったと思います。もともと自分の世代より古めのゲームのほうが好みだった私は単純明快なゲーム性と魅力的な音楽やドット絵に衝撃を受けました。さらにその少し後に実家でスーパーファミコンを発見したことで、レトロゲームの世界に興味を持ち始めるようになりました」(たにすさん、以下同)

最初はゲーム屋やリサイクルショップで安価で売っているなかで、気になったソフトを毎週買っては、ちょっとだけ遊んで…という繰り返しをしていた、たにすさん。そのうちに、ゲーム以外にもさまざまなコンテンツに興味を持っていき、気がついたらレトロゲーム全般、往年のキャラクターグッズ、昭和グッズなどを集めることが楽しくなり、それがやがて大きな生きがいとなっていったという。

10年以上もの期間をかけて収集したコレクションの中でも、特に高額だったものは、アンパンマンの『てれびでんわ筐体』だ。画面上のアンパンに電話をしながら指示を出すゲームで、プレイをするとカードがもらえる。

10万円以上を要したアンパンマンゲーム

「友人と遠方まで引き取りに行ったこともあってトータルで10万円以上かかったのですが、なんと引き取ってから2日で突然電源が息絶えてしまいました。SNSを通じてこういった機器に詳しい方からアドバイスをいただき、なんとか電源部分は復活することができましたが、現在はカードベンダー(カードを出すための機械)が故障中なので、今は同じ機種のカードベンダーを求めて探している状況です…!」

また、お気に入りのモノについては、悩みながらもメダルゲーム機『ウルトラマン ウルトラチャンス』をあげた。

「往年のバンプレストの筐体がとても大好きで、小さな頃からアンパンマンやトーマスなどのマシンで頻繁に遊んでいました。高校時代に気に入ったパチスロ機を何台かゲットしていき、そして2020年に初めて自分で購入した筐体がドラゴンボールの『キャラメダルアイランド』と『ウルトラチャンス』だったのです。

ウルトラチャンスは、ルーレットで当たりに止まると表示された当たり枚数の分だけメダルがもらえる単純明快なゲームです。キャラクター特化された筐体デザインとシンプルなゲーム性に、昨今のゲーセンでは少なくなってきている魅力を感じて大好きです。今やこうしたマシンどころか、メダルゲームそのものが減ってきていますからね…」

現在進行形で収集を続けるたにすさん。定期便のようにさまざまな媒体からGET し、いよいよ管理しきれなくなっているのが最近の悩みの種で、ショップ系アプリを削除して、情報を遮断することまであるそうだ。

「ピーク時は部屋の足の踏み場がほとんどなくなってしまうほどコレクションでいっぱいになります。親になるべく迷惑をかけないように、自分の部屋と空き部屋などにモノを入れて、他にはなるべく入れないようにしておりますが正直、かなり限界が近づいてきております…」

コレクション部屋に家族の反応は…

「今後いつになるかはわかりませんが、新しい住処が誕生した時には、スーパーたにすランド(仮)として、より全体的に私の“大好き”を広げた空間にして、来客者をとことん楽しませたいと長く計画しております。子どもみたいな大の大人の夢って感じでしょうか…。でも今はその夢のためにと思えば、どんなことにも勇気を持ってめげずに続けられる大きな原動力となっております」

SNSにて自分のコレクションを公開するまで、集めてきたモノや趣味が世間一般的にはニッチすぎたため、いろいろと語り合いたい、共有したいことがあってもなかなかできなかったという。しかし、学生時代は公開を一切控えていた趣味部屋のSNSを公開したことで、数々の新たな仲間に出会うことができた。

「ネットの世界はハッキリ言って凄すぎて、私程度のクオリティの部屋でイキってたらアカンなァ…と心底思うほど、素晴らしいお部屋やコレクションルームばかりです。しかし今回投稿がバズったことで、ありがたいことに活動を伝えている友人や趣味で繋がっている方々からたくさんのお祝いをいただきました!

私がよく人々に話していた『ヴィレヴァンのごちゃごちゃ感とかしまむらのゲーセンのような空間』が、リプライの反応を見ると、初めて見ていただけた方にも伝わったようで、涙が出るほどうれしかったです。

一方で家族の反応は、自分の活動を具体的には伝えていないことと、SNSのことはあまりよくわからないということもあってか『ほー!スゲーじゃないの〜』くらいで終了です(笑)。ただ、日々こんなにいろいろなモノがやってきて迷惑も多少かかっている中でも見て見ぬふりをし続けてくれて、ときどきは飾り方や収納方法の提案も出してくれる尊敬する大事な家族があって活動が続けられているので、一生頭が上がりません」

子どもの頃の夢がそのまま実現した“大人のための子ども部屋”。「子ども部屋おじさん」にはそんな夢も詰まっているのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部