打率.220でも頼れる男

新キャプテン離脱の危機を救ったのは、かつてのキャプテンだった。

22日、神宮で行われたヤクルト−DeNAの一戦。0−0で迎えた4回表、一死一塁の場面で打席には4番・筒香嘉智。ヤクルト先発・小澤怜史の6球目、甘く入った速球を完ぺきにとらえると、高々と舞い上がった打球は右中間スタンドへ吸い込まれた。

試合はこの一発で奪った2点のリードを最後まで守り抜き、2−1で逃げ切り勝ち。2連勝でこのカード勝ち越しを決め、今季の成績も20勝21敗1分で勝率5割復帰が目前に迫っている。

チームではここに来て不動の4番にしてキャプテンの牧秀悟が太ももの故障で戦線離脱。この危機的状況で4番を託されたのが、かつてのキャプテンであり不動の4番として君臨していた筒香だった。

2010年から2019年まで横浜・DeNAでプレーし、2020年から渡米。今年4月にアメリカでの戦いに終止符を打ち、古巣への復帰が決定した。4月19日に支配下登録を受け、5月6日から一軍に昇格。ここまでの成績は12試合の出場で打率.220、3本塁打、7打点となっている。

かつての圧倒的な打棒を思うと数字はやや物足りなくも映るが、それ以上に印象的な活躍が光る。

一軍昇格が公示された5月6日のヤクルト戦。7回裏の第3打席にもう少しで本塁打というフェンス直撃の安打を放ち、復帰後初安打をマークすると、3−5で迎えた8回裏二死一・二塁の場面では初球を右中間スタンドに叩き込む3ラン。復帰初日の初アーチが試合をひっくり返す逆転弾となり、横浜スタジアムは歓喜に包まれた。

さらに5月11日の阪神戦では、9−9で迎えた8回裏二死走者なしの場面で起死回生の勝ち越しソロ。そして上述した22日のヤクルト戦と、これまで放った3本塁打はすべて決勝打。SNS上では「決勝打しか打たない男」という声もあがっている。


データで見る「決勝打しか打たない男」の神髄

筒香嘉智・塁状況別成績


ここ一番で頼れる男。そのイメージをデータから深堀してみたい。まずは塁状況別の成績を見てみよう。

今季の打率が.220(41−9)に対して、走者なしの場面では打率.185(27-5)。一方で走者ありなら.286(14-4)だから、やはり塁に走者がいる状況なら期待が高まる。

ちなみに、本塁打は「走者一二塁」「走者なし」「走者一塁」の場面で飛び出したもの。特に「走者一二塁」では打率.500(4−2)と状況別でトップタイの数値をマークしており、今後もこの条件には注目だ。


筒香嘉智・イニング別成績


続いて、イニング別の成績を見るともっと顕著な傾向が。1〜3回は安打がなく、4回も22日の試合の本塁打が初めての安打だった。すなわち、22日試合前の段階では、1〜5回は1本も安打が出ていなかったということになる。

対して6〜8回に好成績が集中しており、8回の打率は驚異の.833(6−5)。2本塁打で4打点だから、試合を決める一打が多いというのも頷ける。

最初の2〜3打席は沈黙が続いていても、終盤のひと振りで試合の主役に躍り出る。数字以上の頼もしさはそういった“特性”によるところが大きいようだ。

牧不在の中で上位陣に食らいついて行くためには、代わって4番を任されている筒香のさらなる奮起が不可欠。「決勝打しか打たない男」から脱却し、かつてのような「どの場面でも頼りになる男」へと変貌を遂げることができるか。背番号25の本領発揮はこれからだ。

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