下り坂を利用したスパートが理想

今週も引き続き関西圏は京都開催。最終週の宝塚記念まで4週間の延長戦がはじまる。春の京都は冬とは違い、比較的好天に恵まれており馬場状態もいい。この先、梅雨に入る状況で、はたして宝塚記念はどんな馬場になるのか。

4回京都開幕1日目のメインは鳴尾記念。阪神と同じく内回り芝2000mで行われる。とはいえ、阪神と京都では最後の坂など違いも大きい。外回りほどではないが、3、4コーナーではアップダウンが待ち受ける。下りを利用した早めのスパートが定石で、阪神よりもレースの動き出しが速い。上がり最速より同3位の成績がよく、先行型が強い。勝負所の下り坂が助けてくれるため、少々のハイペースでは前が簡単には止まらない。そういった傾向も含め、ここでは2018年〜2024年5月19日、京都芝2000m、古馬3勝クラス以上16レースのデータを使用し、コースの特徴をつかんでいく。

京都芝2000mの人気別成績,ⒸSPAIA


平穏な決着が多い京都のなかでも、上級条件の中距離戦はことさら堅い。1番人気【5-3-1-7】勝率31.3%、複勝率56.3%、2番人気【5-2-2-7】勝率31.3%、複勝率56.3%と1、2番人気合わせて半数以上勝っている。複勝率も4番人気までは40%を超えており、ここにラインがある印象だ。

5番人気【0-0-4-12】複勝率25.0%以下は冴えず、大振りできない。とはいえ、10番人気以下【1-4-1-53】勝率1.7%、複勝率10.2%と二桁人気の複穴がないこともない。上位人気を基本線に少し穴を絡めてもいい。

京都芝2000mの枠順別成績,ⒸSPAIA


京都は馬場のバイアスが強く、内外極端な傾向が出やすい。冬のような外差しもあれば、春前半のように内の先行勢が止まらないこともある。その日の馬場傾向はしっかりチェックしておきたいところだ。内回りを一周する芝2000mは1枠が【2-1-4-12】勝率10.5%、複勝率36.8%と高く出ているが、関西圏の芝上級条件は滅多に多頭数にならないので、取り扱いに気をつけよう。12頭立て以下が9レースあり、1枠はそもそも頭数が少なく、確率が高く出やすい。

それを踏まえると5枠【4-3-0-20】勝率14.8%、複勝率25.9%、6枠【3-2-3-20】勝率10.7%、複勝率28.6%など外の成績がいい。特に5、6枠がいいのは真ん中付近の外すぎない枠から序盤、内の攻防をみながら運べるからだろう。先行脚質に優位なコースであり、自分のペースで位置をとれる利点は大きい。内に入った場合、勝負所で仕掛けが遅れることもある。なるべく自由に動けるポジション、かつ外を回りすぎないのがこのコース攻略のカギだ。

ボッケリーニに対抗できるのはロードデルレイ

今年は昨年覇者で重賞3勝馬ボッケリーニが実績面で上をいく。ロードデルレイ、ニホンピロキーフら4歳勢が新潟大賞典3着ヨーホーレイクなどベテランの実績馬たちに挑んでいく。レース巧者の実績馬と勢いある若駒の激突はどちらに軍配が上がるだろうか。

京都芝2000mの位置取り別成績,ⒸSPAIA


冒頭で紹介したように機動力重視のこのコースでは、下り坂に助けられる先行【8-4-4-37】勝率15.1%、複勝率30.2%が強く、前はなかなか止まらない。その分、中団から差す馬は【6-10-9-45】勝率8.6%、複勝率35.7%と2、3着で取りこぼす場面が目立つ。ただ、複勝率は高く、連軸向きなのは脚を溜めて勝負所で動ける馬でもある。内回りを得意とする差し馬を探そう。

先行有利なわりに逃げ馬は【1-1-0-15】勝率5.9%、複勝率11.8%と苦戦する。早めに仕掛けてくる内回りは、直線が長いコースほどマイペースに持ち込めず、直線まで単騎で進められる場面が少ない。真っ先にターゲットになる逃げ馬にとって、直線入り口でどれほど後ろと差をつけられるかが勝負であり、内回りはそんな形になりにくい。

京都芝2000mの前走距離別成績,ⒸSPAIA


前走距離は同距離の2000m【9-8-7-58】勝率11.0%、複勝率29.3%、2000m超【4-4-1-34】勝率9.3%、複勝率20.9%と2000m以上を経験した馬がいい。距離延長は【3-4-8-58】勝率4.1%、複勝率20.5%と惜しい競馬が目立つ。後半、早めにレースが動く内回りでは、最後の最後でスタミナが必要になる。2000m以上を経験し、スタミナを問う流れに慣れた馬を狙おう。

今年のメンバーでは日経賞5着ボッケリーニや白富士Sを勝ったロードデルレイ、新潟大賞典組がいい。マイラーズCから進むニホンピロキーフは小倉の2000mでオープン入りを決めたが、どちらかというと2000mだと惜敗が多い印象もある。マイラーズCの直後でもあり、どのように距離をごまかして乗れるかがポイントになる。

2024年鳴尾記念に関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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