デビュー7場所で一気に主役

大相撲夏場所千秋楽で小結・大の里が関脇・阿炎を押し出しで破って12勝3敗で初優勝した。

まだ大銀杏を結えないデビュー7場所目での賜杯は史上最速。横綱・照ノ富士、大関・貴景勝と霧島、小結・朝乃山が休場し、関脇・若元春も8日目から3日間休場するなど三役以上の9人中5人が休場するという上位陣総崩れの場所で、ニュースターが一気に主役を奪った。

大の里は石川県河北郡津幡町出身の23歳。日本体育大1年時に学生横綱、3年時に全日本選手権を制してアマチュア横綱となり、2023年5月場所で二所ノ関部屋から幕下10枚目格付け出しでデビューした。

デビュー3場所目の同年9月場所には十両昇進して12勝。翌11月場所も12勝を挙げて2024年初場所から幕内に昇進すると、そこからさらに2場所連続11勝をマークした。

そして、今場所は12勝で初優勝。先場所で110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士が初土俵から所要10場所のスピード記録を樹立したが、翌場所にあっさりと更新し、元横綱・輪島の幕下付け出し最速記録(15場所)も大幅に塗り替えた。

大の里の場所別成績


優勝インタビューでは「優勝を石川県の方に見せられて嬉しいです」と元日に能登半島地震が起きた故郷に思いを馳せた大の里。「これからしっかり親方の言うことを守って上へ上へと精進したい。強いお相撲さんになっていきたいと思います」と瞳を潤ませた。

戦国時代から抜け出すか

大横綱・白鵬が2021年9月場所後に引退してから角界は群雄割拠、まるで戦国時代の様相だ。

白鵬の引退以降、初優勝した力士だけでも若隆景、逸ノ城、阿炎、霧馬山(現霧島)、豊昇龍、尊富士、大の里と7人もいる。しかし、大関昇進した御嶽海は在位4場所で陥落。今場所で途中休場した霧島も在位6場所で来場所は関脇に陥落する。 貴景勝も綱取りに挑みながら届かず、来場所は9度目のカド番だ。

照ノ富士も横綱昇進後は17場所中10場所で休場しており、良く言えば実力伯仲、悪く言えば本命不在の状況が続いている。

しかし、横綱だった祖父の四股名を継いだ大関・琴櫻、先場所優勝の尊富士、そして大の里と次代を担う新勢力が台頭。中でも身長192センチ、体重181キロと立派な体格を誇る大の里は6月7日の誕生日で24歳と若く、期待は高まるばかりだ。

大関昇進の目安は「三役で3場所合計33勝以上」。3月場所は西前頭5枚目だった大の里はまだ三役として1場所しか経験していないにもかかわらず、「来場所で2桁なら大関昇進も」といった気の早い声が出ている。

しかし、焦る必要はない。スピード記録よりもさらに上を狙える強い大関こそが今の角界には必要だ。さらに稽古を積み、万全の状態で出てきた照ノ富士を倒して、堂々と大関に昇進してほしい。その時こそ、本当の意味で新旧交代と言えるだろう。

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