大相撲の横綱・照ノ富士(32=伊勢ケ浜部屋)が9日、東京都江東区の伊勢ケ浜部屋で十両・伯桜鵬(20)に稽古をつけた。

 両膝にサポーターを施し、ダンベルを使った上半身の筋力トレーニングやすり足、腰割りなどの基礎運動で入念に体を動かすこと約1時間。それから土俵に入った。宮城野部屋の閉鎖による転籍で4月から同部屋となった期待の“弟弟子”に胸を出すのは、この日が初めて。一方的に押させる一丁押しのような胸出しから始まり、重く残す「あんま」、さらには実戦に近い動きへと徐々に強度を上げていった。

 途中、なかなか攻めきれない伯桜鵬を見かねた照ノ富士が「自分から動けって。動かないならこっちが動いてやるよ」と宣言。“本気モード”の鋭い立ち合いから速い攻めで圧倒して力の違いを示した。上手投げからの豪快な二枚蹴りや、つり落としのような力強い技も披露。最後にぶつかり稽古で全力を出し尽くさせると「できるじゃねえか、全部出し切れよ」と言葉を掛け、厳しさの中にも優しさをにじませた。

 「力を出し切らないと次のステップが見えてこない。それをできるようになってほしい。まだ若いから、この場所のことだけに集中せず1年後、3年後の自分がどこにいるかをイメージしてやらないといけない。ポテンシャルは良いものを持ってますから。うちの熱海富士みたいに稽古すればいいね」。角界の将来を担う20歳により一層の奮起を促し、大きな期待も込めた。