◇パ・リーグ 日本ハム12−3西武(2024年5月15日 エスコンF)

 日本ハムの水野達稀内野手(23)が3年目で待望のプロ初本塁打をマークした。15日の西武戦に「9番・遊撃」で先発し、7回先頭で右中間へメモリアルの1号ソロ。3安打1打点1盗塁と躍動し、今季2度目の5連勝に導いた。チームも2019年以来5シーズンぶりの貯金7。新世代のショートストップが存在感を高めてきた。

 ついに出た。1メートル71の小柄な体に秘めたパワーがさく裂した。社会人出身の3年目、水野が覚醒を予感させる待望のプロ初アーチ。どよめきのような歓声を全身に浴びながら、悠然とダイヤモンドを一周した。

 「素直にうれしいのと、やっと出たなという気持ちが大きい」

 10―3で迎えた7回先頭。2ボール2ストライクから本田の甘く入ったチェンジアップを強振すると、打球は右中間席へ飛び込んだ。新庄監督も「彼はパンチ力があるんで。実はオープン戦で“今のレギュラーは万波君と水野君だよ”と伝えていました。目が飛び出そうなくらいびっくりしていた」と、期待値の高さを明かした。

 母校・丸亀城西(香川)には、「水野伝説」が語り継がれている。高3春の練習試合で右翼102メートルのフェンスを越え、さらに奥の高さ15メートルの防球ネットも越える場外弾を放った。民家に直撃し、河本浩二元監督は「謝罪に行きました。でも後にも先にも、それを越えたのは水野だけです」と、当時のパンチ力を証言する。

 卒業後のJR四国でも、1年目の都市対抗で2000年以降生まれの初本塁打をマーク。プロ入り後はハイレベルな投手陣に苦戦したが、対応力に磨きがかかってきた。高校時代に場外弾を当てた民家に住む家族は、今も香川から応援してくれている。「開幕から1軍で試合に出続けるのは初めてなので充実している。完走したい」。プロでの新たな「水野伝説」は、この一発から始まる。(清藤 駿太)