不祥事で信用が地に堕ちた大砲、メジャー挑戦が思うようにいかず、再出発を図る侍ジャパンの元4番、故障に苦しんでいた若きエース候補……。リベンジを狙う男たちの逆襲が、チームの起爆剤になっている。

【動画】復帰戦でいきなりホームラン!ハマスタを熱狂の渦に巻き込んだ筒香の逆転弾

■山川穂高(ソフトバンク)
 不祥事でシーズンをほぼ棒に振った昨季を経て新天地へ移り、「指定席」とも言うべきホームランキング返り咲きへ向けてアーチを量産している。初めて古巣・西武と対戦した4月12日の試合ではファンから大ブーイングを受けたが、翌日、パ・リーグ史上初の2打席連続満塁弾で強烈な“恩返し”。5月6日の日本ハム戦で打球初速182キロの超速本塁打も叩き込んだ。ここまで9本塁打に加えて35打点もリーグトップ。2年ぶりの二冠王も視界に入る右の強打者加入により、左打者偏向だった打線のバランスも改善され、チームは現在ペナントレースを独走している。このまま活躍を続けることによって、批判の声をシャットダウンできるだろうか。

■筒香嘉智(DeNA)
 試合後に口にした「本当に幸せ」な気持ちは、横浜の空高くへ舞い上がったホームランによりファンの間にも広がった。5月6日のヤクルト戦、5年ぶりの横浜スタジアムで8回に放った逆転3ランは、アメリカからの出戻り試合では史上初のアーチとして、ファンの脳裏と球史に刻まれた。メジャーでは苦杯をなめ続けて通算182試合で打率.197、18本塁打に終わり、志半ばで帰国。DeNA復帰後のファーム調整でも精彩を欠いていたかに見えたが、一軍合流で即結果を残したのはさすがと言う以外ない。侍ジャパンの元4番は、長打力不足に悩む打線の救世主となるだろうか。

■菅野智之(巨人)
 かつては球界のエースとして君臨した右腕が、もう一花を咲かせようとしている。近年は故障による戦列離脱が増え、昨季までは3年続けて防御率3点台で「野球人生が終わる」とまで思い詰めた。だが、オフに身心を見つめ直して迎えた今季は、ストレートの平均球速が4年ぶりに148キロ台に回復。身最長の開幕20イニング連続無失点で滑り出すなど、5先発続けて6イニング以上をこなし、いずれも2四球以下で防御率1.08と全盛期のような姿を取り戻している。昨季の4勝にはすでにリーチがかかり、キャリア3度目の15勝を目指す。
 ■則本昂大(楽天)
 昨季まで通算114勝を積み上げたエースが今季からクローザーに転向。勝利を祝う輪の中心にいる場面が馴染んできた。4月2日の日本ハム戦にわずか4球でプロ入り初セーブを飾ると、体調不良による一時的な離脱はあったものの、開幕から12登板連続無失点と安定感抜群の投球が続く。30歳を過ぎてから奪三振のペースが落ちていたが、リリーフに移ってストレートの平均球速はここまでキャリアハイの149.9キロと球威も復活。投球割合を大幅に増やしたスプリットとの組み合わせで打者を蹂躙し、メジャーへ去った松井裕樹の穴を十分埋めている。

■高橋礼(巨人)
 現役ドラフトでソフトバンクから加入したサブマリンは、ここまで6先発で防御率1.35。新人王を獲得した2019年以上の勢いで躍動している。春季キャンプからチェンジアップに落差をつけるため、高津臣吾(現ヤクルト監督)や潮崎哲也など往年のシンカーの名手を参考に回転を磨き、浮き上がるような軌道のストレートを高めへ投げ込んで打者を翻弄している。過去2年は未勝利とくすぶっていたが、硬軟自在にゴロを誘発してここまで33.1回で被弾は1本のみ。課題の左打者(ここまで10与四球/5奪三振)を攻略できれば、新人年以来の2ケタ勝利も夢ではない。

■梅津晃大(中日)
 大谷翔平(ドジャース)を彷彿とさせるポテンシャル抜群の大型右腕に、ついに本格開花の雰囲気が漂う。入団時から「素質はエース級」と認められながら故障が多く、22年3月にはトミー・ジョン手術も受けた。昨季終盤に復帰マウンドに立ち、今季は4月14日に阪神打線から13三振を奪うなど、規定投球回未満ながら奪三振率9.78を記録。5月6日の巨人戦で今季初白星を手にしたが、6回途中での降板に「これを続けていたら次はない」と語るなど、本人もあくまで高い水準を目指している。“未完の大器”卒業へ向けた快投に注目したい。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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