ここ数年、東京の人気焼き鳥店では、お決まりのコース制ではなく、お好みで注文できる店が増えてきた。

お店へ足を運んだとき、果たしてどんな注文をするのがベターなのだろうか。

そんな疑問に、名店『鳥よし』のご主人・猪股善人さんが答えてくれた!

『鳥よし 銀座店』で語られた、焼き鳥を美味しく食べる順番&ポイントとは?


焼き鳥は元来、大衆の食べもの。「気軽さ」を大切にしたい


昭和の時代、焼き鳥といえばお好みで食べることが当たり前だった。

当時、コースで供する焼き鳥店といえば、京橋の老舗『伊勢廣』ぐらいなもので、好みの串を好きなように注文する。それが本来の焼き鳥店の姿だったはずだ。

それが、いつ頃からだろうか、おまかせコースがすっかり定番化。黙って座っていれば、次々と串が繰り出されるスタイルに、食べる側もすっかり慣れてしまったのが現状だろう。

だが、ここに来て原点回帰。お好みでも楽しめる焼き鳥店が、いままた、少しずつではあるが増えてきているようだ。

焼き鳥フリークにとっては誠に喜ばしいことではあるものの、その反面、ずっと受け身で食べてきた側にとっては「どういう頼み方をすれば良いの?」「食べる順番に決まりはある?」等々、戸惑うことも多いだろう。

そこで、今回は“焼き鳥を上手に食す極意”を焼き鳥界のレジェンドにご指南いただくことにした。



中目黒に店を構えて30年、変わらぬ人気と実力を誇る『鳥よし』のご主人・猪股善人さんだ。

現在、中目黒の2軒をはじめ、赤坂、銀座、西麻布などに店舗を展開するが、そのいずれもが、開店当初からおまかせのほかに、お好みもOKのスタイルを続けている。

猪股さん曰く「焼き鳥って、元来、大衆の食べものでしょう。サラリーマンが会社帰りに、軽く一杯やってひと串ふた串つまむ。そんな気軽さが焼き鳥らしさだと思うんです。その“らしさ”を僕は大切にしたい。だから、お客様のお好きなように食べてもらっていいんですよ」とのこと。


串の合間に野菜で緩急を付けるのが『鳥よし』のおまかせ


食べる順番を気にすることなく好きな串から食べればいいし、レバー3本、つくね2本と、同じ串を複数頼むのもノープロブレム。

あっさりとした塩味のむね肉やササミから始め、次はレバーにしようかつくねがいいか、それともいきなり手羽先で攻めようか―と、自分なりのコースを組み立てるのも食いしん坊にとっては楽しいもの。

もちろん、最後まで美味しくいただきたいというのは誰しも思うはずで、それなら「(鶏串の)合間に野菜を挟むといいと思いますよ」とは、猪股さんのアドバイス。

『鳥よし』でも、おまかせコースでは、鶏の間に野菜串を適宜提供している。


いよいよ公開!『鳥よし』が導き出した、美味しく食べる順番とは


そこで、参考までに『鳥よし』のおまかせコースの流れを尋ねてみると、「最初は誰にもおなじみの串から始めている」そうで、まずは、「つくね」と「かしわ」が登場。



スタンダードはタレ味だが、塩が良ければ先に申請を。「全部塩味で、という方もいらっしゃる」そうだから遠慮は無用だ。

その後、歯応えの小気味良い塩味の「砂肝」と続き、鶏の類が3種出て野菜の出番。



「銀杏」、「ししとう」で口中をリセットし、更に「厚揚げ」と「白玉」で気分転換。



ここで、今度は「ぼんじり」、「皮」とややこってり系の串で攻めの体勢に。いわばここがコースの山場。



レモン、山椒、七味は味変アイテム。「手羽先」や「ぼんじり」など脂の多い塩味の串にはレモンが添えられる。

山椒や七味はタレ味向きだが、そこはお好みで。



次に「小玉ねぎ(ペコロス)」でひと息つき、さっぱりとした「さび焼」で舌を落ち着かせ、「レバー」で鶏の串は一段落。

終盤にタレのレバーを出すニュアンスは、どこか鮨の穴子の立ち位置と似ている気がする。

「最後にアスパラガスを出した段階でひと区切り。その後はお客様のお腹に合わせ、追加するもよし、ここでストップという方も多い」そうで、コースの本数は、おおよそ12〜13本前後。

ちなみに串のバラエティは常時20種ほどを用意。中には「食道」や「ハツモト」などの希少部位もあるが、本数が少ないゆえ、コースには入らず、希望があればアラカルトでオーダーを。

また、都度注文をするのは面倒。けれども、好きな串は必ず食べたいという時は、○○を入れて○本くらいで、と予め伝えておくのが賢明だ。



ちなみに、焼き鳥は焼き上がりまで時間がかかるゆえ、おまかせの場合は、ストップをかけた段階では既に2本ほど焼きに入っていることが多く、それを見越して声をかけると良いだろう。

ぜひ、この順番を参考に焼き鳥ライフを充実させてもらいたい。


【POINT】


①出されたらすぐ食べるのが一番の美味しいコツ

「時間がかかると思ったよりも食べられなくなるのでテンポ良く出すようにしています」とは猪股さん。

食べる側も、串を出されたらすぐに口にしたい。なんと言っても焼きたてが一番だ。

②鶏のパートは好みに応じて入れ替えてもOK

今回はつくねとかしわからだが、淡白な「さび焼」から始め、「皮」や「ぼんじり」、追加の「手羽先」などを後半に持っていくのも一手。

その場合も野菜を挟むことを忘れないように!


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