すでに〝横綱級〟だ。大相撲夏場所千秋楽(26日、東京・両国国技館)、新小結大の里(23=二所ノ関)が関脇阿炎(30=錣山)を押し出し、12勝3敗で初優勝を果たした。初土俵から所要7場所の優勝は史上最速。新三役では、1957年夏場所の安念山以来で67年ぶりの快挙となった。早くも横綱候補としての期待が高まる中、元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)がその可能性を占った。

 大の里が優勝経験もある実力者を圧倒した。阿炎にもろ手で突き起こされても下がらない。左おっつけ、右をのぞかせて前へ出ると、力強く押し出して完勝。秀ノ山親方は「気迫が違う。誰が相手でも自分の相撲を貫く覚悟があった。阿炎がもろ手で来ると分かった上で、しっかり踏み込んで根こそぎ持っていった」と感嘆した。

 今場所は1横綱2大関を撃破するなどの快進撃。勝った相撲は、持ち味の馬力を生かして前に出る相撲が光った。秀ノ山親方は「横綱大関を含めた上位陣で、馬力は大の里がトップ。体が大きい上に瞬発力もあるから、本人は自分の立ち合いだけに集中すればいい。逆に相手は、迷いなく踏み込まれたらやりづらさしか感じない」と強さの要因を分析した。

 日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は「今年中に大関? もちろん。1年後にはもっといっているかもしれない」と早期の綱取り実現の可能性を指摘する。秀ノ山親方も「私もそう思います。今回の優勝や、その先の大関も通過点でしかないのでは。上位の中では、誰よりも横綱に近い存在。優勝を決めた一番も、並の力士ならあそこまで力を出し切れない」とうなずいた。

 かねて角界では新たな横綱が待望される一方、今のところ大関陣で突き抜ける存在は見当たらない。そうした中で、大の里は希望の星でもある。秀ノ山親方は「大スター誕生じゃないですか。何よりスケールの大きさを感じさせるし、ファンの期待に白星で応えることができる力士。今後の大相撲を引っ張っていってもらいたいですね」と期待を寄せた。