NHKマイルカップ2024

[GⅠNHKマイルカップ=2024年5月5日(日曜)3歳、東京競馬場・芝1600メートル]

 今週は3歳マイル王決定戦、GⅠ・NHKマイルC(5月5日=東京芝1600メートル)が行われる。クラシックの谷間に開催されるGⅠという印象が強いが、今年に関しては“超”が付くほどの豪華メンバーがエントリー。その中心となるのが、昨年の最優秀2歳牡馬で皐月賞3着のジャンタルマンタル(牡3・高野)だ。レコード決着の皐月賞から中2週での再東上や中間の軽めの調整が気になる人もいるだろうが、心配ご無用。陣営は激戦をプラスにとらえている。

「皐月賞という最高の追い切りをしましたから。あとは淡々と乗ればいいんです」(高野調教師)

 先週の水曜に坂路を4ハロン66・1―15・5秒で軽く流したジャンタルマンタル。ほとんどの厩舎はセオリー通り、1週前追い切りを水曜か木曜に消化する。高野厩舎も例外なくそう。ならば、1週前追い切りは木曜に行うのだろうか、気になった記者がトレーナーに尋ねると、返ってきたのが冒頭の言葉だった。

 過去に類を見ない超高速決着だった皐月賞。ジャスティンミラノの勝ち時計1分57秒1(良)はレースレコードをあっさり更新し、2015年の中山金杯でラブリーデイが記録したコースレコードさえも0秒7上回るものだった。その激流を先行して勝ちに行き、3着で耐え抜いたジャンタルマンタル。この事実をどうとらえるか。普通に考えれば“消耗が激しいレース”となろうが、トップトレーナーは違った。“最高の追い切り”として受け止め、そこからの中2週かつ再びの東上という事情を考慮して、中間は軽めの調整で十分――というのだ。

 とはいえ、レース後の反動は大丈夫なのか、どうしても気になってしまう。その点を再度、トレーナーに投げかけてみると…「順調にきています。身のこなしはさらに軽くなりましたし、現状の感触はいいですよ。競馬で究極の戦いになったときがどうかですが、獣医や乗り手の感覚では問題ないです」と返ってきたのは冷静なジャッジ。ショウナンパンドラやナミュールなど、これまで多くのトップホースを送り出してきたトレーナーだけあって、その言葉の重みは大きい。

 今回はデイリー杯2歳S→朝日杯FSを連勝した時と同じ、マイル戦に戻るジャンタルマンタル。今後もマイル路線を歩むのかも気になるところだが…「(皐月賞は)ジョッキーも攻めて行って勝負して、馬もそれに応えてくれました。いい競馬だったと思います。ただ、GⅠで戦うという意味では現状、この馬よりもたけている馬が数頭いますね。距離自体は2000メートルでもこなせますし、長い距離をこなせるような、これまでの調教メニューを課しています」。トレーナーは将来的な中距離重賞参戦に含みを持たせつつも、今回は実績のある距離で2つ目のGⅠタイトルを確実に取る――勝算アリと見込んでの参戦というわけだ。

 そう考えると、NHKマイルCはジャンタルマンタルにとって“負けられない戦い”。ゆえに、かけられるプレッシャーは大きいが、それを押しのけるくらいのポテンシャルがあることはすでにレースで証明済みだ。加えて、前述のように、タイトなローテーションで臨む形にはなったものの、それは決して“強行軍ではない”。むしろ、皐月賞という最高の追い切りが、ジャンタルマンタルをさらに進化させている可能性すらある。新緑の府中で2歳王者の名にふさわしい、圧巻のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。

身のこなしがさらに軽くなったジャンタルマンタル
身のこなしがさらに軽くなったジャンタルマンタル

著者:明神 瑠