しっかりと階段を上りつつあるアーバンシック
しっかりと階段を上りつつあるアーバンシック

日本ダービー2024

[GⅠ日本ダービー=2024年5月26日(日曜)3歳、東京競馬場・芝2400メートル]

【トレセン発秘話】
 美浦トレセンで記者生活をスタートさせて2週目の新入社員、栗栖歩乃花です。今回は日本ダービーに出走するアーバンシックに注目。先週ご紹介したアドマイヤベル同様、奇麗な栗毛と流星がすごくかわいいのですが、いったい、どんな馬なのでしょうか。管理する武井調教師と、デビューから乗り続けている横山武史騎手にいろいろとお話を伺いました!

 まず驚いたのは、お二人が新馬戦の頃(昨夏)のアーバンシックについて「とんでもない馬だった」と口を揃えたことです。武井師が「本当に何もできない。止まっちゃう、走らない、立ち上がる…」と振り返ると、横山武騎手も「何をしても全て拒否するし、反応しても人を落とすようなそぶりをする馬だった」。人と同じで馬にも個性があるのでしょうが、なかなかのわがままっぷりですよね。

 ただ、そんなアーバンシックもしっかり成長しているそうです。「皐月賞の時から前向きさが出てきました。競走馬には前進気勢があることが重要だからその点はクリアできたかなというところです。100点の競馬はまだ無理ですが、着実にステップアップしてきています」(武井師)。せっかくなので、いつも一緒にいるからこそ知っている秘密を尋ねてみると…「特にありません! 自分は皆さんに全部話していますから(笑い)」。武井師が隠し事をしない誠実な方だという秘密をゲットできてちょっぴりうれしい私でした。

「今一番勝ちたいレースです」

横山武(右)を直撃する新人の栗栖記者
横山武(右)を直撃する新人の栗栖記者

 話をアーバンシックに戻します。かなり癖が強い馬なのは明らかになってきましたが、もう一つ気になることがあって、思い切って聞いてみました。ともに戦っている横山武騎手は、アーバンシックがどんなことを考えているか分かるのでしょうか?

「走るのが好きじゃなさそうですね(笑い)。いつもふてぶてしく、なんか面倒くさいなっていう感じで走っているのが分かります」

 しっかり成績を残しているのに意外過ぎる! とはいえ、走ること全てが嫌なわけではないようで「軽い準備運動の段階が特に面倒くさそうにしてます。早いペースだったら大丈夫なんですけど」とレースには前向きなようです。確かにスピードに乗った後、特に最後の直線の追い込みはすごい。ある意味、納得でもありました。

 ちなみに、アーバンシックと横山武騎手は似ている部分があるらしく「僕も走るのが好きじゃないからそこは気が合います。『でも、走んなきゃダメなんだよ』って自分にも言い聞かせながら普段からトレーニングしてるので(苦笑)」と共感する部分があることを教えてくれました。とはいえ、甘やかすわけにもいきません。一緒に戦っていくのですから、「心を鬼にして」接しているといいます。

 そんな横山武騎手はダービーに4回騎乗していて21年がハナ差、昨年はクビ差で悔しい思いをしています。最後に「ダービーはどんなレースですか?」と聞いてみると、力強くひと言。

「今一番勝ちたいレースです」

 シンプルな言葉に並々ならぬ思いが詰まっていると感じました。自分と似た部分のあるパートナーとの大舞台でどんなレースを見せてくれるのか、そして癖が強い中でも成長中のアーバンシックがどんな走りを見せてくれるのか、今から本当に楽しみです。(栗栖歩乃花)

著者:東スポ競馬編集部