人馬ともに重賞初制覇となった
人馬ともに重賞初制覇となった

マーメイドステークス2024

[GⅢマーメイドステークス=2024年6月16日(日曜)3歳上牝、京都競馬場・芝内2000メートル]

 16日、京都競馬場で行なわれた牝馬たちによるハンデGⅢ・第29回マーメイドS(芝内2000メートル)は4番人気アリスヴェリテ(牝4・中竹)が優勝。50キロの軽ハンデを生かして見事に逃げ切りを決めた永島まなみは、日本人女性騎手としては藤田菜七子、今村聖奈に続く3人目のうれしいJRA重賞制覇を果たした。50キロの軽ハンデ馬の優勝も、それだけが勝因ではない人馬の充実ぶりがそこにはあった。

「50キロのハンデでもありましたし、前走で騎乗していた柴田裕一郎君にもアドバイスをもらって、アリスヴェリテにとって一番いい形の競馬をしたいなと思っていました」。レース後のインタビューではいつものふんわりとした雰囲気でレースを振り返った永島だったが、そんな姿とは対照的とも言える肝の据わった騎乗ぶりだった。

 スタート地点から1コーナーまであまり距離のない内回り2000メートル、逃げ馬にとっては不利な外め13番枠。しかも初めてコンビを組むアリスヴェリテは、これまで何度も出遅れたことのあるクセ馬だ。それでも細心の注意を払ってスタートを決めると、ちゅうちょなく先手を主張。競り合いも懸念された最内枠スタートの同型馬ベリーヴィーナスを1角では2番手に控えさせると、あとは独り旅となった。

 一見は抑えの利かない暴走とも映る逃げでも折り合いはついており、ペースを落とし過ぎず11秒台のラップを刻み続ける。後続の脚を削りつつセーフティーリードを取って直線を迎え、猛追してくる実績上位馬たちを尻目に歓喜のゴールへと飛び込んだ人馬。終わってみれば前後半5ハロンは58秒3―58秒9のほぼイーブン。暴走でもなくスローでもなく、絶妙なペース配分が生んだ重賞初Vでもあった。

「後ろとはまだ差があるのは分かっていましたが、ゴール前は何もこないでほしいと必死で追っていました。でもそこで最後まで頑張ってくれたアリスヴェリテには本当に感謝です。まだまだ未熟な私ですが、現状に満足せずもっと成長していけるように頑張りたいです」と喜びをかみ締めて話す永島。日本人女性騎手として3人目の重賞制覇にファンから熱い声援が送られると、いっそう笑顔がはじけた。

 もちろん格上挑戦で重賞Vを決めたアリスヴェリテも褒められるべきだ。2歳秋のアルテミスS(3着)ではリバティアイランドとタイム差なしの接戦。その素質から将来を嘱望されるも、気性の難しさもあって長い期間、勝利から見放されて1勝クラスにとどまり続けた。しかし今年に入ってゲートが上達し、精神面で進境を見せてようやく本格化のムードを感じさせる。と同時に、パンサラッサのように後続に脚を使わせる〝けれん味のない逃げ〟というスタイルも確立。今後は斤量増との戦いともなるであろうが、もう一つ上のステージでその人馬の成長を期待したくなる今回の勝利であった。

著者:石川 吉行