基本的にこの本に載っている内容は、すでに私たちが国語の授業で学んできたことです。

例えばこの本では「明確化」という言葉が何回も登場し、「コレ・ソレなどが何を指しているかはっきりさせる」「あいまいな表現を、つまりどういうことか言い直す」「自分の言葉で言い直す」という訓練として紹介されています。

書いてある内容を明確化する訓練が、読解力を身に付けるうえでも必要になってくる、ということです。これは、国語の授業やテストでも出てきた内容ですよね。

「これは何を指すのか答えなさい」「選択肢のうち、どれがこの文のまとめにふさわしいですか」といった問題を解いたことがある人は多いと思います。この問題は、読解力を付けるために必要な方略だったのだ、と説明されています。

このように、私たちが今まで学んできたことにどのような意味があるのか。そして読解力の身に付け方に関して、新しい視点を提供してくれる本なのです。当たり前のように私たちが実践していることだけれども、そのことは実はとても大事なものだったのだ、ということに気付かせてくれる一冊です。

どの文章にも型がある

3 『一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書』

最後は、『一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書』です。この本は、東大合格者が多い西大和学園の国語科教師である辻孝宗先生が、東大志望の子たちに向けて行っている授業内容を、噛み砕いて教えてくれているものです。東大に合格できるくらいの読解力を身に付けるために必須の教科書だと言えます。

この本の面白い部分は、古文や漢文の文章も合わせて、国語の授業で扱う文章には7つの型がある、と説明しているところにあります。この7つの型で、すべての文章が説明できるというのです。

①  同格型

最初にテーマを述べて、その後にそのテーマと同じことを繰り返す型。

例:「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」と始まる『平家物語』。

②  質問型 

最初に質問を投げかけて、その後にその答えとなる内容を語っていく型。

例:四季折々、いつの時間がいいのか、という質問に対する答えを書いている『枕草子』。

③  対比型

正反対なのに似ている性質があるものを2つ述べて、その2つの違いについて語っていく型。

例:「意地悪なおじいさん」と「優しいおじいさん」が出てくるような昔話。