また、新駅とひたち海浜公園の南口ゲートとが現行計画では400mほど離れており、来場者は駅から5分程度歩く必要がある。これについては「今後、公園側と協議し、直近ルートの開放なども検討していく」と語る。

さらに地域としての輸送体系の充実には「鉄道の輸送力だけでは需要に応じきれない。周辺のバス事業者との協力や連携も必須」として、「共通乗車券の設定や協調ダイヤ(連携ダイヤ)の調整は、絶対条件だと考える」。

キハ3710形。湊線の主力車両(筆者撮影)

定住人口の増加につなげる

これからのひたちなか海浜鉄道については、「今までもそうだったが、まちづくりや地域全体の活性化を視野に入れての運営をしていく。また、延伸によってお越しいただく来園者にひたちなか市や茨城県の魅力を感じていただき、リピーターとなっていただく。おさかな市場やアクアワールド・大洗、ほしいも農家さんなどとも連絡を密にして、沿線全体を盛り上げていく。また、通勤輸送手段の確保により、定住人口の増加なども考えていく」と話した。

さらに「ローカル鉄道活性化の最先端事例として、これまでの取り組みを対外的にアピールし、日本全国の地域交通の活性化に繋げるお手伝いをしたい。本年度は当社が設立した一般社団法人のローカル鉄道・地域づくり大学が、国土交通省の地域交通共創モデル実証プロジェクト事業を受託し、行政向けにレクチャーを予定している」という。

全国各地でローカル線が廃止され、街に人が減ってきたという話を、毎日のように聞かされる。そんな中、ひたちなか海浜鉄道は、地域と一体となって輸送を活性化させ、延伸の計画を進行している。昨年末から話題になっている千葉県でのダイヤ改正問題と比較するのはおかしいかもしれないが、沿線の利用者や住民、その周りにいる人たちのために、公共交通は存在している。

全国の交通事業者にとっても、ひたちなか海浜鉄道の事例は、とても大きい。全国の鉄道存続に悩む地域には、ぜひとも参考にしていただきたいと思う。

著者:渡部 史絵