在留資格の取得や変更、更新などのために入管が求める書類がいろいろあるのだが、それとは別に、任意で「理由書」なるものを添付することが半ば慣習のようになっている。そして、必要書類とはされておらず任意であるはずの「理由書」次第で申請が許可されるかどうかが決まってくるという一面がある。

このあたりの曖昧さが入管行政の問題だという声もあるのだが、ともかくどういった理由でその在留資格が必要なのか、審査官が納得できるようしっかり申請者本人たる外国人から念入りにヒアリングし、

「人生をしっかり書き込むんです」と恩田さんは力を込めて話す。

だからこそ、家族の中に入っていって親しくなり、暮らしぶりを肌で知り、この国でいかに生きていきたいか、その切実な思いを聞き取って「理由書」に落とし込んでいく。

そうなると仕事の枠を超えて、生活や就職や人間関係や、あれやこれやの相談に乗ることもしばしばで、むしろ「そういう時間のほうが多いかも」と笑う恩田さんだが、ゆえに「リトル・インディア」で信頼される存在になった。

外国人経営者にとって大事なビジネスパートナー

そんな恩田さんを、西葛西のインド食材店「スワガット・インディアンバザール」の店主ビネス・プラサードさんは、「ホームロイヤーだよ!」と絶賛する。ホームドクターならぬ「家庭の法律家」というわけだ。

行政書士とは外国人ファミリーの人生の伴走者のようだと実感する言葉だが、ビネスさんたち外国人経営者にとっては大事なビジネスパートナーでもある。

というのも、外国人が食材店やレストランなど事業を立ち上げるときの、開業手続きを請け負う行政書士も多いからだ。新しく社長となる人やコックの在留資格だけでなく、保健所を通じた営業許可の申請、司法書士とタッグを組んでの会社設立など、一連のサポートも手がける。

西葛西のインド人の店を回り、相談を聞く様子はまさにリトル・インディアの御用聞き(筆者撮影)

西葛西ではここ数年でインド料理のレストランがずいぶんと増えたが、その陰には行政書士の働きがある。外国人コミュニティーの「縁の下の力持ち」と言ってもいいかもしれない。