仮に当初計画通りに実行されていたなら、2004年から2020年の16年間では、年金額は約14.4%削減されていたはずだ。ところが、実際には3回しか行われていないので、約2.7%しか削減されていない。したがって、不足を取り戻すには、現時点で、年金を少なくとも約11.7%減額する必要がある。

これが困難であれば、今後もマクロスライドを継続する必要がある。しかも、従来より強化して、物価上昇率いかんにかかわらず、毎年0.9%程度の減額を実行しなければならない。

上で「少なくとも」と書いたのは、スライドを適用される世代が後にずれれば、受給者総数が増えるからだ。したがって、受給者一人あたりの所要削減率は、0.9%より高くなる(あるいは、実施年数が多くなる)。

保険料収入は不足 

次に、保険料について見てみよう。ここでは、2005年と2020年の比較を、厚生年金の厚生年金勘定について行うことにする(厚生年金の厚生年金勘定とは、厚生年金のうち、共済組合などを除く部分。なお、旧厚生年金と共済年金は、2015年に統合された)。

厚生労働省の「平成16年財政再計算結果」によると、2004年度財政再計算での標準的なケースでは、賃金上昇率は2.1%と想定されたので、保険料率一定でも、保険料収入は、2005年から2020年の15年間で、約3割増加するはずだった。

そして、保険料率は2005年の14.3%から2020年の18.3%まで28.0%引き上げられた。だから、保険料算定の基礎となる年収が3割増加すれば、保険料収入は、30+28=58%増加するはずだった。

2004年度財政再計算では、厚生年金の厚生年金勘定の保険料収入は、2005年度の20.8兆円から2020年度の34.8兆円まで、67.3%増加すると見積もられた。