「過去を振り返れば、枠で視聴習慣を持っていただくことはテレビの特性としてはありがたいことでしたが、この数年で視聴習慣は多様化しています。リアルタイムで視聴してほしい一方で、NHKプラスの配信でも見てほしい思いもあります」(小西氏)。

看板の帯枠は持っているものの、現実ではNHKプラスの見逃し配信視聴が増えている。そんな時代の「夜ドラ」を小西氏は、「視聴者それぞれの時間のなかで楽しんでいただけるコンテンツとして、15分で気楽に触れられるテーマのドラマを、どのような形でもお楽しみいただけるということが大事だと思います」と語る。

番組のつなぎとしても存在感発揮

こうした視聴習慣の変化がある一方で、「夜ドラ」は、前後の番組のつなぎとしても存在感を高めている。

たとえば「夜ドラ」の視聴者が、放送が終わった直後の23時から始まる、星野源と松重豊がMCの音楽番組『おげんさんのサブスク堂』や、所ジョージが社会の片隅で起きる不思議な事件や事象を取り上げる情報番組『所さん!事件ですよ』を続けて見ることで、これらの番組の新たなファンになるかもしれない。そういうテレビの流れのなかでの帯枠としての「夜ドラ」の役割もある。

「平日の夜にリアルタイムでのんびりドラマを見ていただいて、前後の番組を含めてNHKの魅力的なコンテンツをより楽しんでいただくのが夜ドラの挑戦の1つです」(手塚氏)

視聴者の選択肢が爆発的に広がっている時代だからこそ、リアルタイム視聴はテレビならではの楽しみになっている。ドラマファンにとっては、ドラマを見ながらSNSで考察を発信する考察視聴スタイルが一般的になるなか、リアルタイムで見ないとSNSやネットニュースでネタバレを食らってしまうリスクが生じている。若者のテレビ離れがあるとはいえ、リアルタイム視聴のニーズはまだまだ根強くあるのだ。