2)ついに動員強化措置に踏み出したウクライナ

アメリカによる支援再開で、今後の戦況に注目が集まる中、もう1つ重要なポイントとされるのがウクライナの「動員」の問題だ。ゼレンスキー大統領は軍の要望を受け入れる形で動員を強化するための措置に踏み切った。

ウクライナ

4月25日のロイター通信の報道によると、ウクライナ国内では動員に関する法改正が可決され、徴兵年齢を27歳から25歳に引き下げ、動員された兵士が3年後に動員を解除されるという条項も軍の要望を受けて削除された。

さらに、海外の領事館の業務を一時停止し、24日には、兵役の対象年齢にある男性国民が国外でパスポートを申請することを一時的に禁止する規則を承認したと発表し、海外在住の徴兵対象者にも圧力をかけている。

ウクライナの動員強化措置について、渡部悦和氏(元陸上自衛隊東部方面総監)は以下のように分析する。

俗に3点セットというのがあり、1つ目は、兵器・砲弾の数。2つ目が兵員の数で、動員と関わる。3つ目が築城でしっかりとした陣地をつくりロシア軍を迎え撃つことだ。動員については、前総司令官も、40から50万という単位で必要だと発言していた。今回の措置だけでそれだけの兵員を動員できるかは疑問であり、ゼレンスキー大統領や議会にとっても、これだけの大規模な動員は政治的に大きなリスクとなるだろう。しかし、2年以上にわたり休みなく戦っている兵士を交代させるためにも大量動員は必要となる。ウクライナがアメリカなどに対して兵器の追加を要求しているのと引き換えに、兵士の数を増やすことを求められている。いずれにしろ非常に困難な状況であり、全体として戦いの激化は避けられないだろう。
今回のアメリカからの兵器等の支援によって、ウクライナ側がやっと戦える状況になる。しかし、兵器・砲弾、兵員の数、築城の3点セットをしっかりと整えて戦わないと、ロシア軍の攻勢を今年1年間、防ぎきることができないだろう、という危機感を私自身は感じている。
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