珍しいひと言だった。「それしか狙ってなかったので」。27日のヤクルト戦でサイスニードの直球を捉え、逆転2ランを放った近本の言葉だ。近本が打席で狙い球を絞ることは、基本的にない。

 「あの時だけですよ」。直球を狙っていたのは確かだった。27日の試合後、岡田監督は前夜(26日)に野手を集めてミーティングを行ったことを明かし、「一番典型的なんは近本のホームランやったな」とうなずいていた。直球狙いの指示が出ていたのかもしれない。

 本塁打の打席。近本は3球続いた緩い変化球を全て見送っていた。「振らなかったことが良かった」と近本は振り返った。いたずらにバットを出せば、どんなタイミング、球種を待っているかバッテリーに見透かされる可能性があったからだ。そして4球目の「狙い球」を一振りで仕留めた。

 「こどもまつり」開催日に大勢の子どもたちを喜ばせた一発には、大人の駆け引きが凝縮されていた。(山本直弘)