その敷地には、4階建ての中層マンションが建設される予定であることは飯田さんも知っていた。でも、あのケヤキの木は区が指定する保存樹木のはず。飯田さんは、慌ててマンションの開発事業者に問い合わせた。

担当者から返ってきたのは、衝撃の言葉だった。「その木は、保存樹木の指定を解除されているので“元・保存樹木”です」。世田谷区からも「(保存樹木の)登録解除されている」という答えが返ってきた。

ケヤキにつけられていた保存樹木のプレート(写真:飯田さん提供)

保存樹木は所有者の意思で解除できる

「保存樹木」制度とは、世田谷区が「みどりの基本条例」にもとづき、区内の樹木や樹林地を保存樹木として指定する制度だ。同区のホームページには次のように記載されている。

世田谷区には、国分寺崖線や河川、湧水、農地や屋敷林等、長い年月をかけて育まれてきたみどりに恵まれた住環境があります。この制度は、大切に育てられてきた樹木や樹林地を次の世代に残していくための取り組みの一つです。

保存樹木には今回のケースのように個人・法人が所有する私有地の樹木も含まれ、所有者の同意が得られれば区が指定することができる。所有者の負担にならないよう、枯れ枝や不要な枝の剪定など、区が維持管理の一部を支援する。

一方、保存樹木が枯れたり、土地を売ることになるなど、伐採しなければならない事情が生じたときは、所有者が指定を解除するために「伐採等届」を提出する。「届出」とはいわば、自治体側が受理すれば自動的にその効力が発生するもので、行政に検討・判断の余地はない。

(出所:世田谷区のホームページより)