韓国の数ある授賞式の中でも、映画・テレビの総合芸術賞であり、長い歴史と信頼ゆえに「韓国の演技者たちが最も受賞したい賞」と言われる「百想芸術大賞」。

視聴率や話題性だけではなく“芸術性”の観点から、作品性と演技力を優先した選考がされるため、本国で高い評価を受けた選ばれし名作韓国ドラマをチェックできる、ファンにとっては見逃せない注目の賞です。

本記事では、2024年5月7日に授賞式が行われた「百想芸術大賞」で受賞した選ばれし韓国ドラマ&多部門でノミネートした作品(作品関連賞や演技関連賞など)をご紹介します。

『ムービング』<テレビ部門大賞、脚本賞、男性新人演技賞(イ・ジョンハ)>

■あらすじ
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1990年代、韓国の国家安全企画部は、超能力者たちによるブラック・オプスチームを設立した。極秘任務の遂行を命じられたこのエリート部隊のメンバーは、超能力を使って国を守り、不可能なことも可能にする日々を過ごしていた。
しかしある日突然、部隊は姿を消し、国中に散り散りになった。

数十年後、歩くよりも先に宙に浮くことができた少年キム・ボンソクと、再生能力により自動車事故で無傷で生き残った少女チャン・ヒスは同じ学校に通うことになる。互いに自らの秘密を打ち明け、世の中には自分たちのような人間がいることを知り、すぐに親しくなる。
そんな彼らの日常をよそに、フランクという謎の配達員がソウル市内で能力者たちを殺害し始める。子供たちが能力者と暴かれる前に、フランクを止めることはできるのだろうか。
出典:https://www.disneyplus.com/ja-jp
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■見どころ
世界中のメディアが絶賛し、韓国でも「2023年最高のドラマ」とも謳われた本作は、韓国の有名作家であるKang Fullの同名人気ウェブ漫画の実写化ドラマ。

SFヒーロードラマと思いきや、超能力を持つ子たちを守る親の深い愛と、親子二世代の愛の物語といった、実に韓ドラらしいヒューマンドラマが展開!特に中盤から始まる大人パートでは、大人な恋愛ドラマにときめき、子どもへの深い愛に大号泣間違いなし!若い頃の恋愛を懐かしみキュンとしながら、家族愛に胸が熱くなる昨年の大傑作です。

百想芸術大賞では、テレビ部門の最高賞である大賞をはじめ、脚本賞、男性新人演技賞(イ・ジョンハ)を受賞し、三冠に輝きました。『ムービング』はDisney+(ディズニープラス)で配信中(2024/5/8時点)。

『恋人〜あの日聞いた花の咲く音〜』<作品賞、男性最優秀演技賞(ナムグン・ミン)>

■あらすじ
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1636年の春、成均館の儒生たちの熱い視線を集める容姿端麗で世間知らずな両班の娘ギルチェ(アン・ウンジン)は、片思いのヨンジュン(イ・ハクジュ)が、親友ウネ(イ・ダイン)と婚約していて想いが届かず、やきもきする日々を送っていた。

花摘み行事の日、ヌングン里にジャンヒョン(ナムグン・ミン)という謎の男が現れる。ギルチェはヨンジュンの気を引こうとブランコ作戦を決行するが、チマ(スカート)の裾から見えるギルチェの足につられて男たちが群がるも、肝心のヨンジュンは無関心な様子。悔しがるギルチェがブランコを大きく揺らし、バランスを崩したところ、ジャンヒョンが落下するギルチェを抱きとめたのだった。お高くとまっているが、実はいじらしいギルチェに惹かれたジャンヒョンは、それから何かとギルチェを構うが相手にされず。
ある日、清の軍隊が国境を越えて、朝鮮の首都・漢陽の近くまで押し寄せて来たという知らせが届き…。
出典:https://kntv.jp/program/kn231101/
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■見どころ
本作は、ナムグン・ミン&アン・ウンジン主演でおくる、1636年に起こった清と朝鮮の戦い”丙子の乱(へいしのらん)”に翻弄される人々の、愛と生命力を描いたロマンス時代劇。

永遠の愛を信じていなかったミステリアスな男ジャンヒョン(ナムグン・ミン)が一人の女性に出会い、愛する人のためなら死も恐れず守り抜く姿に沼入りする視聴者が続出しました。韓国では昨年のMBC放送ドラマの総決算となる授賞式「2023MBC演技大賞」にて、大賞を含む8冠受賞の快挙を達成するなど、2023年放送の作品の中でもトップクラスの人気を誇る一作です。

百想芸術大賞では、作品賞、そして切ないロマンス演技で多くの視聴者の心を揺さぶったナムグン・ミンが自身初となる男性最優秀演技賞を受賞しました。

『マスクガール』<女性助演賞(ヨム・ヘラン)、男性助演賞(アン・ジェホン)>

■あらすじ
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自分の外見にコンプレックスをもつ会社員が、マスクで顔を隠してインターネットのライブ配信を開始。だが、次々と降りかかる不幸な出来事により、その人生は思わぬ方向に転がり始める。
出典:https://www.netflix.com/jp/title/81516491
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■見どころ
大胆な展開と強烈なメッセージで大きな衝撃を与えたウェブ漫画を原作とした本作は、容姿にコンプレックスを持った平凡な会社員のキム・モミ(イ・ハンヒョル)が、毎晩マスクで顔を隠してライブ配信者として活動し、思いがけない事件に巻き込まれていくストーリーを描くNetflixシリーズ。

強烈なストーリーに惹きつけられるのはもちろん、デート暴力やインターネット文化など韓国社会が直面している問題について警鐘を鳴らし、高い評価を得ました。

百想芸術大賞では、再びモンスターのような演技力を見せたヨム・ヘランと、強烈すぎるオタク演技で「俳優人生ラストの作品なのか」と引退説まで囁かれたアン・ジェホンが揃って助演賞に輝きました。『マスクガール』は2024年5月8日現在、Netflixで視聴可能です。

『夜に咲く花』<女性最優秀演技賞(イ・ハニ)>

■見どころ
本作は、昼間は朝鮮最高の名門家の嫁として静かに生き、夜には仮面をかぶり正義のため戦う未亡人チョ・ヨファ(イ・ハニ)と、ソウルの四大門の中の皆が憧れるイケメン従事官パク・スホ(イ・ジョンウォン)が繰り広げるコミカル史劇。

コミカルかつ痛快な物語に、3話にして2ケタ台の視聴率を叩きだし、最終回は視聴率18.4%でMBC金土ドラマ視聴率歴代1位を記録し好評を得ました。

百想芸術大賞では、朝鮮時代の未亡人の物語を彼女だけの愛らしさとコミカルさで表現したイ・ハニが女性最優秀演技賞に輝きました。

『最悪の悪』<演出賞>

■あらすじ
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1995 年、韓国から日本へ流れる麻薬密売組織を解体するため、韓国と日本が合同捜査に乗り出す。田舎町の刑事ジュンモは、昇進を狙って新興の犯罪組織に潜入捜査する。まさか自分が、妻のイジョンと犯罪組織のボス、キチョルの複雑な関係に踏み込むことになろうとは考えてもいなかった。逃れられない運命の輪に巻き込まれ、ジュンモの不安は募る。真実を解き明かすためには、より深く、より速く行動しなければならない。

ミッションが完了すれば、彼らは元の生活に戻れるのだろうか?このゲームで最後に笑うのは誰なのか、最悪の悪は誰なのか?
出典:https://www.disneyplus.com/ja
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■見どころ
本作は、1990年代の韓国を舞台に、江南、中国、日本の麻薬密売トライアングルを潜入捜査するために、田舎の刑事パク・ジュンモがギャングに扮し、犯罪組織に取り入るノワール・クライムアクションドラマ。

チ・チャンウク(パク・ジュンモ役)、ウィ・ハジュン(ギチョル役)、イム・セミ(ユ・ウィジョン役)ら、豪華キャストたちの熱演と、最後まで予想のつかない波乱の展開にドラママニアたちからも称賛の声が上がりました。

百想芸術大賞では、キャラクターを作品の中に生き生きと表現して、スタイリッシュな作品を誕生させたハン・ドンウク監督が演出賞を受賞しました。『最悪の悪』はDisney+(ディズニープラス)で配信中(2024/5/8時点)。

『誘拐の日』<男性新人演技賞(ユナ)>

■あらすじ
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娘の病院代を準備するため前妻ヘウンの提案を受け入れ、11歳の少女ロヒを誘拐することにしたミョンジュン。誘拐を実行するべく向かった彼の車に飛び込んできた少女は、まさしくロヒその人だった。

気を失ったロヒを家に連れ帰ったミョンジュンは、目覚めたロヒが記憶がないのをいいことにロヒの父親に成りすまして危機を回避し、計画どおりロヒの両親から金を取るために電話をかけるが、連絡がつかない。もどかしくなり家まで行ってみると、ロヒの両親は何者かによって殺害され冷たい死体となって運び出されるところだった。

殺人の濡れ衣を着せられないようにと、慌ててロヒを連れて身を潜めることにしたミョンジュンを、優れた頭脳を持つロヒは次第に疑い始める。
出典:https://www.amazon.co.jp/
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■見どころ
本作は、白血病の娘の治療代を工面するために、少女を誘拐し身代金を得ようとした気弱な男ミョンジュン(ユン・ゲサン)と、誘拐のターゲットとしていた少女ロヒ(ユナ)が行動を共にすることで始まるサスペンスドラマ。

誘拐と殺人事件、ロヒの秘密という三つの要素が複雑に絡み合っている本作は、回を追うごとに深まっていく謎と、予想の斜め上をいく展開、そして誘拐犯と少女が織りなす笑いあり涙ありの物語に、熱狂する視聴者が続出しました。

心を揺さぶる演技で視聴者の心を掴んだロヒを演じたユナが、見事女性新人演技賞に輝きました。『誘拐の日』はAmazon Prime Videoで配信中(2024/5/8時点)。

『今日もあなたに太陽を 〜精神科ナースのダイアリー〜』<ノミネート>

■あらすじ
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精神科で働き始めた心優しい看護師が、さまざまな困難にも負けず、受け持ちの患者たちの毎日を明るく照らすため全力で仕事に取り組む姿を描く。
出典:https://www.netflix.com/jp/title/81572595
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■見どころ
本作は、ウェブ漫画を原作とし、精神科で初めて働くことになった看護師ダウンが、精神病棟の中で出会う世界と心を支える人々の話を描いたヒューマンドラマ。

まだまだ「精神病」に関する偏見が存在する社会で、精神疾患はいつどこでも誰にでも来る、予想できない病気であり、「壁にぶつかっても、いつか必ず朝が来る」という希望と慰めを与えるメッセージを届けました。

心の病をリアルに描き出したと高い評価を得て、百想芸術大賞では、作品賞をはじめ脚本賞、女性新人演技賞(イ・イダム)と3部門でノミネートを果たしました。『今日もあなたに太陽を 〜精神科ナースのダイアリー〜』は2024年5月8日現在、Netflixで視聴可能です。

『悪鬼』<ノミネート>

■あらすじ
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扉の外は別世界だ。扉を開けると、そこには悪鬼がいる。悪鬼に取り憑かれた女と、その悪鬼が見える男が、5種類の神体を取り巻く疑問の死を暴くオカルト・ミステリー。

亡くなった父親の遺品を受け取って、悪鬼に取り憑かれた貧しい生まれのク・サニョン。鬼と神を見ることができる民俗学者ヨム・へサンと出会い、悪鬼に関する真実を追いながら、自分が知っていた世界とは全く違う世界と向き合う物語。
出典:https://www.disneyplus.com/ja-jp
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■見どころ
2022年「百想芸術大賞」最優秀演技賞を受賞(『二十五、二十一』)し、日本でも愛されヒロインとなったキム・テリと、『サイコだけど大丈夫』では自閉症を抱える兄役を見事に演じた、演技の神様オ・ジョンセが共演!

悪鬼に取り憑かれた女ク・サニョンと、その悪鬼を見ることのできる男ヨム・へサンが、疑問の死を暴くオカルト・ミステリーです。

『シグナル』『キングダム』など数々の名作を執筆してきたキム・ウニ作家が織りなす世界観と、俳優陣の圧倒的演技力に称賛の声が相次ぎました。百想芸術大賞では、受賞とはならなかったものの、作品賞と脚本賞、芸術賞にノミネートを果たしました。『悪鬼』はDisney+(ディズニープラス)で配信中(2024/5/8時点)。

『良くも、悪くも、だって母親』<ノミネート>

■あらすじ
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突然の事故により、子供の頃の精神状態に戻ってしまった野心あふれる検察官とその母親。思わぬ運命に直面した二人は、親子関係の修復に向けた長い道のりを歩き始める。
出典:https://www.netflix.com/jp/title/81669775
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■見どころ
2021年百想芸術大賞で三冠に輝いたドラマ『怪物』を演出したシム・ナヨン監督、脚本は、映画『エクストリーム・ジョブ』『完璧な他人』などを手がけたペ・セヨン脚本家が担当し、大きな期待が寄せられていた本作品。

事故で記憶を失った息子のために"悪い母親"になる決意をしたシングルマザーのヨンスンと、不慮の事故により幼い子供になってしまった息子カン・ホが再び親子関係を回復するヒーリングコメディです。悪い母にならなければならなかった母の葛藤と親子の愛に多くの視聴者が涙しました。

百想芸術大賞では、受賞には至りませんでしたが作品賞のほか、脚本賞、母親を演じたラ・ミランの最優秀演技賞、助演賞(カン・マルグム)など、4部門でノミネートを果たしました。『良くも、悪くも、だって母親』は2024年5月8日現在、Netflixで視聴可能です。

『運の悪い日』<ノミネート>

■あらすじ
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人間味あふれる平凡なタクシー運転手、オ・テク(イ・ソンミン)のやけに”運が良かった日”。その日の最後に、ムクポへ行く長距離客、クム・ヒョクス(ユ・ヨンソク)を乗せたが…。その男は、親しげな顔で近づき完全犯罪を犯すサイコパスで、連続殺人犯だった。

クム・ヒョクスに息子を殺されたファン・スンギュ(イ・ジョンウン)は、唯一の追跡者として2人を追い続ける。
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000140.000113690.html
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■見どころ
人気のNAVERウェブトゥーンを原作に、平凡なタクシー運転手のオ・テク(イ・ソンミン)が高額を提示する木浦(モクポ)行きの客であるクム・ヒョクス(ユ・ヨンソク)を乗せていく途中、彼が連続殺人犯であることを知り、恐怖の走行を始めるスリラードラマ。タクシーの中で繰り広げられる極限状態での物語は、スリラードラマファンを熱狂させました。

百想芸術大賞では、狂気が宿る圧巻の“サイコパス演技”を見せたユ・ヨンソクが最優秀演技賞に、孤独な追跡者である被害者の母親を熱演したイ・ジョンウンが女性助演賞にそれぞれノミネートを果たしました。


■執筆:韓国エンタメライターNana
韓国ドラマをこよなく愛する韓国エンタメライター。WEB媒体を中心に、ラジオ、雑誌等で韓ドラ愛を叫ぶ記事を執筆中。最新の人気作からマニアックで隠れた名作、K-POPまで幅広く紹介。

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