外国為替市場の対ドル円相場が乱高下した29日に、政府と日本銀行が5兆円規模の円買いドル売りの為替介入に踏み切った可能性があることが、30日に日銀が公表した統計にもとづく市場関係者の推計で分かった。政府は介入の有無を明らかにしていないが、市場では警戒が強まり、円安の進行に一定の歯止めがかかっている。

 東京市場が休場だった29日、アジア市場での取引で1990年以来34年ぶりに1ドル=160円台の円安ドル高水準に達した。だがすぐに急速に円買いの動きが出て154円台半ばまで円高に振れた。その後も、円安方向に戻ろうとする局面で断続的に円買いが続いた。このため市場では、政府・日銀が為替介入に動いたとの見方が強まっていた。

 為替介入は財務省が日銀に指示を出し、民間の金融機関を相手に通貨を売買する。その結果、金融機関が日銀に預ける当座預金が減ることになる。実際の決済は2営業日後になるとされ、29日に介入があった場合には5月1日の残高に反映される。

 日銀が30日公表した1日の当座預金残高の予想は、介入があった場合に反映される「財政等要因」が7兆5600億円の減少だった。民間短資会社セントラル短資は事前に、2兆500億円の減少と予想しており、約5兆5千億円の差がある。市場関係者によると、この差額が介入の規模になる可能性がある。同じく急速な円安局面で実施された2022年の為替介入では、3度にわたって計約9兆円が投じられた。