京都で7月にある日本三大祭りの一つ・祇園祭のプレミアム観覧席をめぐり、八坂神社(京都市東山区)の野村明義宮司が、プレミアム席で酒や料理を出すことに反対し、プレミアム席を売る市観光協会の理事を辞任する意向を協会に伝えたことがわかった。「祭りは疫病を鎮めるための神事で、お酒や料理を楽しみながら見るパレードやショーではない」と話しているという。

 市観光協会は昨年、前祭(さきまつり)の山鉾(やまほこ)巡行(7月17日)を近くで見ることができる「プレミアム観覧席」を導入した。訪日外国人観光客らの富裕層をターゲットにした試みで、1席40万円で販売し、お酒を含む飲み物やおばんざいなどを提供した。今年は1席15万円と20万円の席を販売している。

 神社によると、宮司は昨年も酒や料理の提供に反対し、今春に観光協会に対応を求めた。6月6日と11日に神職を通じて辞任の意向を伝えたという。神社の担当者は「宮司は観覧席を設けることや金額に反対していない。神事でもある山鉾巡行を見る人の姿勢として、飲食をしながら見物するのはおかしいと訴えている。理事を続ければ、今のやり方を推奨していると捉えられてしまうため、理事をやめる意向を示している」と話す。

 市観光協会の担当者は「こういう形で理事を降りられることは本意ではない。まずは直接本人に意向を確認したい。酒の提供が問題ならメニューの内容を含め最大限配慮したい」と話す。宮司からは理事再任を承諾する書面をもらっているという。(西崎啓太朗、武井風花)