宮崎市は、宿泊施設の利用者への宿泊税導入の検討を始めた。老朽化した観光施設などの更新が今後想定される一方で、人口減少で税収見通しが厳しくなるなか、観光振興策の新たな財源を探る。7日には、税方式の妥当性や、対象とする使途などを議論してもらう検討委員会が始まった。

 宿泊税は、自治体が特定の目的のために課税する法定外目的税。条例を制定し、総務相の同意を得ると導入できる。市によると、大阪府や福岡市など9自治体がすでに導入しており、宿泊者から1泊につき定額や定率で徴収している。宮崎市が導入すれば、宮崎県内では初めてとなる。

 検討委は、研究者や事業者ら外部委員5人で構成。7日の初会合では市側が、使用料や寄付金、入湯税の超過課税など、他の財源捻出方法と比べて安定的に必要な財源が確保できること、旅行者の行動の中で宿泊施設の利用は、交通機関などと比べて捕捉しやすいことなどを挙げ、宿泊税の検討に至った理由を説明した。

 委員からは、導入の方向性について異論は出なかったが、「市の予算が他の自治体と比べてどれぐらい観光に充てられているのか知りたい」「今の市の観光予算を減らして宿泊税ではよろしくない」「(市と県の)二重課税になるときついので、県とも調整してほしい」などと意見が出た。

 市によると、昨年の観光入り込み客数は618万2千人(速報値)で、コロナ禍前の2019年とほぼ同じ数に回復。宿泊客数も221万6千人(同)と、回復傾向にある。

 一方、市有の道の駅フェニックスは築59年、プロ野球球団がキャンプを張るSOKKENスタジアムは築25年、アイビースタジアムは築21年と施設の建て替えや更新時期が迫っている。

 清山知憲市長は「受け入れ環境を持続可能に整備するには財源が必要。市民だけでなく観光客に一部負担をいただき、満足度の高い体験をしていただくものとしたい」とあいさつした。

 検討委は、すでに導入している自治体の関係者から意見を聴くなど月1回のペースで議論を重ね、8月に報告書をまとめる予定。会長に就任した宮崎大学地域資源創成学部の丹生(たんしょう)晃隆教授は「非常に注目される取り組み。十分に議論したい」と語った。

 市によると、4月1日現在、市内には旅館業法や「民泊新法」で申請・届け出している宿泊施設が221施設ある。(中島健)