修学旅行シーズンが今年もやって来た。JR東海が運行する専用団体列車の第1便が8日、JR京都駅に到着し、千葉、埼玉の中学生約1250人が降り立った。京都市や京都商工会議所などでつくる京都観光推進協議会が新幹線コンコースで到着歓迎式を開き、法被姿の関係者が拍手と琴の演奏で出迎えた。

 市観光MICE推進室によると、修学旅行のピークは5〜6月ごろと、9〜12月ごろ。2022年に京都を訪れた修学旅行生は約74万人で、23年は調査中だが、ほぼ前年並みという。コロナ禍前の水準に戻りつつある。

 市は京都観光のリピーターを増やしたいと、官民を挙げて修学旅行の誘致に力を入れる。専用サイト「きょうと修学旅行ナビ」を設け、引率する学校関係者だけでなく生徒の事前学習に役立つ情報を発信する。

 最近では寺社文化財の拝観・鑑賞のほかに「京都でSDGsについて学びたい」という問い合わせが多い。疑問を大切にしながら街を巡って解決策を探る「Q都(きゅーと)スタディトリップ」のスポット作りにも力を入れている。

 「大学の街」ならではの取り組みもある。京都で学ぶ大学生がお兄さん、お姉さん役として修学旅行生を案内する「B&Sプログラム」を10年前から実施している。年間約2500人の利用があるという。

 企業版ふるさと納税を活用し、1〜3月の閑散期に修学旅行生を呼び込む体験学習「アオハルギフト・京都」も昨年度から始めた。宿泊先に舞妓(まいこ)と地方(じかた)を派遣し、舞を鑑賞したり一緒に記念撮影をしたり、伝統芸能への理解を深めてもらう。

 松井孝治市長は「京都への修学旅行をきっかけに将来的には京都で学び、京都で働くなど、末永く関わりを持っていただきたい」と話した。(日比野容子)

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 日本修学旅行協会(東京)によると、修学旅行はおおむね1年半〜2年前に契約が交わされるのが一般的だという。今春の修学旅行の契約は、コロナ禍のまっただ中に交わされた。学校側からは感染対策として、引率教員は個室、1部屋あたりの生徒の人数も従来より減らすことを求められた宿泊施設が多いという。

 しかし、最近の物価高、光熱費の値上がり、人件費の高騰といった「三重苦」が、受け入れる側の旅館・ホテルを直撃している。

 JR京都駅で修学旅行生を出迎えた旅館関係者は「原価ベースで20〜40%の経費増。修学旅行生が来れば来るほど持ち出しが増え、赤字覚悟だ」と打ち明けた。

 京都府旅館ホテル生活衛生同業組合が修学旅行を受け入れている約50の旅館・ホテルを対象に今年実施した調査では、宿泊代金の平均は1泊2食つきで1人あたり9千円台だった。

 京都市内でホテル・旅館などを経営する「佐野家」の専務で、組合の教育旅行部会長を務める佐野誠治さんは「本音では、最低でも1万5千円ほどいただかないと厳しく、もう限界だ。それでも修学旅行生は将来の京都ファンの卵たち。いい思い出を持ち帰ってもらいたい」と話す。(日比野容子)