文明開化の時代と言われる明治の日本では、関東を中心に西洋式の建物が次々と造られました。湯島にある「旧岩崎邸庭園」は、洋館と日本家屋が共存する和洋折衷式の個人邸。現在は、国の重要文化財に指定されている庭園で洋館、和館、撞球室(どうきゅうしつ)を見学することができます。明治時代の華やかな生活がしのばれる豪華絢爛な邸宅を訪れてみませんか?

湯島や上野散策で訪れたい都立庭園

東京メトロ湯島駅から徒歩3分、上野公園の不忍池や湯島天神からすぐの場所に「旧岩崎邸庭園」はあります。

東京都内には「都立9庭園」とよばれる庭園があり、歴史的に重要な建物や、自然豊かな庭園を訪れることができますが、「旧岩崎邸庭園」はそのひとつ。明治29(1896)年に三菱の創始者である岩崎弥太郎の長男、久彌の邸宅として造られました。

正門についたら窓口でチケットを購入して入場しましょう。門から続く馬車道を上がっていくと袖塀(そでべい)があり、現在の三菱グループのロゴのもとになった、岩崎家の家紋「三階菱(さんがいびし)」を見ることができます。

クラシカルな雰囲気ただよう洋館へ

岩崎家の洋館は、家族の集まりや来客をもてなすための迎賓館として使用されていました。設計は鹿鳴館(ろくめいかん)やニコライ堂など、明治期を代表する建築を手がけた、イギリス人建築家ジョサイヤ・コンドル。重厚感のあるデザインと、細やかな装飾が特徴のジャコビアン様式の建物です。

洋館に足を踏み入れると、そこには天井の高い広々とした空間が広がっています。天井や壁紙、家具のどこを見ても繊細で優美な装飾が施されていて、思わずため息がでてしまうほど。なかでも、注目してほしいポイントの一つがステンドグラスです。鹿や三菱を象徴するひし形など、おもしろいデザインのガラスを見つけることができます。

パステルカラーがキュートな婦人部屋

らせん階段を上がり、2階へ上がると婦人用の客室が3室並びます。ピンクや水色を基調とした、どの部屋もうっとりするほどかわいらしい内装です。

客室のなかでもひときわ目を引くのが、黄金色にきらめくゴージャスな部屋。立体感のある金色の壁紙が一面に貼られています。この壁紙は、金唐革紙(きんからかわし)といい、ヨーロッパの王侯貴族の城館の壁や天井に使われていた、金唐革という装飾用の「革」を日本の和紙で再現したもの。西洋と日本の文化の交流を示す貴重な品物です。

岩崎家が日常生活を過ごした和館

洋館と廊下でつながる和館は、岩崎家の住居として使われていました。20棟以上が連なる大きな屋敷でしたが、現在は冠婚葬祭などに使われた大広間だけが残されています。
部屋の奥にある色あせた障壁画をよく見ると、富士山と麓に広がる波が見えてきます。こちらの絵は狩野派の画家、橋本雅邦が下絵を描いたと伝えられています。

洗練された空間でいただくお抹茶セット

和館にあるお茶席では、季節の上生菓子と抹茶がセットになった「お抹茶セット(850円)」がいただけます。大正元年創業の老舗「菓匠 花見」のねりきりは滑らかで上品な味。重要文化財の中でくつろぐ贅沢なひとときを堪能しましょう。お茶席では金唐革紙のしおり(1320円)や岩崎家にゆかりのある小岩井農場のクッキー(790円〜)などのおみやげも買えますよ。

秘密の地下通路でつながる撞球室

お茶席で休憩したら、芝庭を通って撞球室へ。「撞球」とはビリヤードのことで、明治時代に上流階級の紳士の間で流行していました。撞球室へは洋館から地下通路を通ってたどり着けるようになっています。地下通路は通常、一般公開はしていないのですが、月に1回のツアーで見学することができます。詳細や開催日は公式SNSをチェックして下さいね。

これが個人の邸宅かと驚くほど豪華な建物を見学できる旧岩崎邸庭園。こんどの休みは、こだわり抜かれた建築と庭園を見学しに出かけてみてはいかがでしょう。