日本人メジャーは11人

 カブスの今永昇太(30)が4月26日(現地時間=以下同)のレッドソックス戦に先発。5安打1失点で無傷の4勝目を挙げた。まさにエース級の活躍を見せているが、チームメイトの鈴木誠也(29)が4月18日放送のABEMA「緊急渡米!石橋貴明のベースボールのおかげです」に出演し、司会の石橋貴明(62)にこんなことを漏らしていた。

「基本、テレビは(ドジャース・大谷)翔平(29)と(同・山本)由伸(25)ばっかりなんで、ほかの選手の情報が分かんない。自分から(スポーツニュースを)チェックしたりはしないんですけど、パッとニュースで出てきたりしたら見るんですけど。基本的に(扱うのは)その2人なんで見飽きて」

 番組はスプリングキャンプ中に収録されたもの。メジャーリーグで活躍する日本人同士の親しさから出たジョークだが、テレビが大谷と山本中心で放送されている状況は変わっていない。

 鈴木は現地時間4月14日のマリナーズ戦で右腹を痛めて故障者リスト入りしているが、シーズン序盤は絶好調だった。「大谷ばかり」の発言には“ライバル心”もあったのかもしれない。

「今年は本当に調子がよくて、故障者リスト入りするまでの15試合全てにスタメン出場し、3本塁打を含む59打数18安打で打率3割5厘。チーム最多の13打点を叩き出していました」(米国人ライター)

 オープン戦も好調で、一時は「4番抜てきか?」という声もあったほど。クレイグ・カウンセル新監督(53)はその鈴木を2番に置く攻撃的打順で、開幕ダッシュに成功している。

 MLB機構はペナントレース開幕直後、ベンチ入りメンバーと負傷者リストなどに入った国別選手数の内訳を発表した。メジャーリーガー全949人中、アメリカと米自治領プエルトリコの出身選手は685人、それ以外の外国籍選手数は、日本は10人で「国・地域別」では7位だった。

 大谷、山本、鈴木、今永に加え、パドレスのダルビッシュ有(37)、松井裕樹(28)、ブルージェイズ・菊池雄星(32)、レッドソックス・吉田正尚(30)、メッツ・千賀滉大(31)、タイガース・前田健太(36)。そして28日にはレッドソックスの上沢直之(30)がメジャー昇格を果たした。この「11人」という人数は13年と同じで、これにメッツ3Aの藤浪晋太郎(30)が昇格すれば、新記録達成となる。

「スコアボードに日本人選手名があっても、もう違和感はありません。単に日本人選手が増えたというよりも、どの球団でも投打の中心選手として活躍しているからでしょうね」(現地メディア関係者)

 鈴木が言うように、日本で報じられるメジャーリーグ情報が大谷、山本の成績だけでは物足りない。大谷が松井秀喜氏(49)に並ぶメジャー通算176号アーチを放った時には大きな注目が集まったが、こんな指摘も聞かれた。

「米メディアは176という数字にはさほど興味がありませんでした。松井氏の記録に並んだと知り、地元TV局・スポーツネットLAなどが『Stand-Aloneになった』(他に比のない存在)と紹介していました。ただ、それはドジャースナインが大谷を祝福している理由がわからない、多くの米国人野球ファンに“説明”する意味も含まれていました。それに比べ、今永の活躍や菊池の序盤戦の好投は、米国内ではごく普通に評価されています」(米国人ライター)

最少失点で投げ切る今永

 今永は3勝目を挙げた4月20日のマーリンズ戦では、6回を投げ被安打5、失点3。前回14日の登板からボールカウントが先行するなど苦しい場面も多かったが、調子が悪いときも最少失点で抑える“テクニック”で、カウンセル監督の信頼も厚い。

「自責点が公式記録になったのは、1913年。以後、開幕から自責点3以下を3試合以上続けて記録したメジャー投手は、過去3人しかいません。今永の凄さを伝えるための比較対象がMLBの歴史だったので、米国ファンも評価しています」(前出・同)

 今永がメジャーリーグで成功したポイントとして、強気に内角を攻める点も挙げられていたが、それだけではない。投球の角度が“独特”なのだという。

「メジャーリーグに行ってから、肘の位置が少し低くなったようですね。米国のマウンドに合わせたのだと思います」

 古巣・DeNAの球団スタッフがそう言う。今永は身長178cmで、野球選手としては小柄なほうだ。日本の球場よりも傾斜面が高いマウンドに立つのなら、上から投げ下ろしたほうが効果的だと思われるが、そうではない。他のメジャー投手よりも身長が低い分、リリースポイントも低くなる。対戦チームのバッターは、今永の「低いリリースポイント」からさらに低めに投げ下ろされる軌道に翻弄されているのだ。

「昨年オフ、獲得交渉を進めていた米球団スタッフが評価していたのは、右バッターを苦にしないことと、直球のキレでした。DeNA時代の映像を見て、浮き上がるような独特の軌道も評価されていました。ただ、調子の悪いときは直球にキレがなく、棒球になっていると心配する球団もありました。今永はリリースポイントを低くすることで、調子が悪いときも棒球にならないよう工夫したんだと思います」(前出・米国人ライター)

 前出のDeNAスタッフによれば、「3年くらい前からMLB挑戦の目標」を周囲に打ち明けていたという。単に夢を語るのではなく、「活躍するにはどうすれば良いのか」も考えてきたのだろう。

「今永は4年5300万ドル(76億8500万円)で契約しました。これはレギュラーを保障されたトップクラスの契約であり、カウンセル監督も今永のオープン戦登板に関しては結果を全く求めないエース級の扱いでした。カブスは地区優勝を争っているので、今後は首位攻防戦などの重要な試合も任されるでしょう」(前出・現地メディア)

「ヤンキースキラー」と呼ばれている男

 また、日本のメディアでもっと評価されても良いのが、ブルージェイズの菊池だ。27日のドジャース戦では、花巻東高校の後輩である大谷との対戦が実現。3打数1安打1打点となり、2敗目となってしまったが、22日のロイヤルズ戦に先発し、6回、被安打5、奪三振4、失点2で今季2勝目を収めている。

「今季初勝利がヤンキース戦でした。ヤンキース戦の先発は早くも2回目ですが、ニューヨークメディアが菊池のことを『ヤンキースキラー』と称しています」(現地記者)

 前々回登板の5日でのこと。菊池には勝敗がつかなかったが、5回3分の1を投げ、失点ゼロ、ブルージェイズは零封リレーで勝利した。舞台は敵地・ヤンキースタジアムで、地元TV局SNYは、

「菊池はメジャーデビューからヤンキースタジアムで計7試合で投げたが、通算防御率は1.67。Hit The Wall」

 と、菊池が難敵であることを訴えていた。

「17日のヤンキース戦にも先発し、6回1失点で勝利投手になっています。今季の対ヤンキース戦の防御率は0.79です」(前出・同)

 伝統球団の難敵である菊池のピッチングがア・リーグ東地区の優勝争いに大きく影響してくるのは必至だ。大谷も見たいが、今季は日本人メジャーリーガーの飛躍のシーズンともなりそうだ。

デイリー新潮編集部