最後の優勝は1998年――横浜DeNAベイスターズは12球団で最も優勝から遠ざかっている。

 ミスが重なって序盤から大量リードされたり、逆に大量リードを終盤に逆転されたり……。そんなぶざまな野球を本拠地横浜スタジアムのファンは自嘲的に“ベイスボール”と呼んだり、黒星をもじって“ベイス★ボール”と書いたりしている。

 ただ、2021年に三浦大輔監督が就任すると、初年こそ6位だったが、2年目は2位、3年目は3位、と2年連続でAクラス入りするようになった。

 今季はどうか。鍵を握るのはこの男かもしれない。

 かつての本塁打王、筒香嘉智(32)である。20年に渡米したものの、かの地に爪痕を残せず、今季から古巣に復帰している。

電通の意見に耳を傾けた?

「巨人からも熱烈オファーがあり、そちらの方が好条件だったようですが……」

 とスポーツ紙記者。

「『筒香巨人入り』という報道が出るとファンは一斉に大ブーイング。最終的には本人が決めたとのことですが、関係が深い電通の意見にも耳を傾けたようです」

 マーケティング的には、DeNA一筋の方が彼のブランド価値は高まり、巨人入りで得る短期的な高収入を上回る、ということか。

 少なくとも今のところはその計算が合っている。

 復帰初戦は5月6日、ハマスタでのヤクルト戦だった。8回裏3−5の劣勢から、筒香が逆転3ラン本塁打を放つ。スタンドは歓喜のるつぼと化した。

 11日の対阪神ホームゲームでもお立ち台に上がったのは彼だった。序盤から2−9と大量リードされ、典型的な“ベイス★ボール”状態だったのだが、8回裏、味方が同点に追いつくと、打席には筒香。カウント0−2からのスライダーをライトスタンドにぶち込んだ。ファンは拍手喝采である。

荒れた試合になることが多いハマスタ

「ハマスタは狭く、本塁打が出やすい。また海に近く風が強いので、凡フライが本塁打になることもあれば、守備の失策を誘うこともある。荒れた試合になることが多いので、どのチームも『ここでは何点あっても安心できない』と言いますね」

 漫画のようなドラマが起きるわけだ。そして、

「三浦監督は“堅守”を掲げていて、チーム防御率はここ2年ともリーグ3位。失策数も22年はリーグ最少で、23年も2位と激減した。ここで筒香をはじめ打線が奮起すれば……」

 今季は“ベイス☆ボール”が多く見られるだろう。

「週刊新潮」2024年5月23日号 掲載