日本にも数多くの電気自動車=バッテリーEV(BEV)やプラグイン・ハイブリッド(PHEV)を投入しているメルセデス・ベンツ。電動化の波は、SUVの中でも孤高の存在であるGクラスにも及ぶことになった。

北京とビバリーヒルズで披露

ドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティ2021で初披露され、その後、進化版がジャパンモビリティショー2023にも出品されたGクラスをベースにしたBEVのコンセプト・モデル、「コンセプトEQG」の市販バージョンがついにデビュー。それが、北京モーターショー2024とアメリカのカリフォルニア州ビバリーヒルズで披露された「メルセデス・ベンツG 580 with EQ テクノロジー」だ。

Gクラスらしさは不変

電動化されてもGクラスそのもののエクステリアは不変。EQブランドの特徴でもあるオプションのブラックパネル・ラジエーター・グリルを選択することで、メルセデスの電動車らしい雰囲気を味わうことができる。また、わずかに高くなったボンネット、充電ケーブルなどが収まるリア・ボックスにエアカーテンが備わるのもG580の特徴だ。さらに、Aピラーに空力を整えるブラスチック製のクラッディングとルーフ・スポイラーとの組み合わせることで、エアロダイナミクスの最適化も施されている。

最大トルクは1164Nm

メカニズム面での特徴は、ラダーフレームにマウントされたフロントとリアのアクスルに各2つ、計4つモーターを用いた駆動装置。モーターは短いハーフシャフトを介して各1輪ずつを駆動。システム総合最高出力587ps(432kW)を発生。なお、最大トルクは1164Nmに達する。0-100km/h加速は4.7秒。最高速度は180 km/hに制限される。

ローレンジ・オフロード・ギア・リダクションの採用により、優れた悪路走破性を確保。さらに注目すべきは「G-ターン」と呼ぶ機構。左右のタイヤを逆回転させることで、泥濘路や未舗装路面を含め、ほぼその場で車両を旋回させることができる。狙いはオフロード走行時の小回り性能の確保だ。

内燃機関モデルを上回る悪路性能

サスペンションは内燃機関モデル同様、フロントに独立式のダブルウィッシュボーン・サスペンション、リアにリジッド・アクスルを採用。トヨタの「クロールコントロール」のようなオフロードのクルーズ・コントロールである3速インテリジェント・オフロード・クロール機能も用意。EQテクノロジーが搭載される新型メルセデス・ベンツG580は、内燃機関モデルと同じように最大100%の勾配走行が可能で、最大35度までの横傾斜でも安定性を保てるという。、電動化されたにもかかわらず、徹底したバッテリー保護対策やアンダーボディの強化などにより最大渡河水深は850mmに達し、内燃機関モデルよりも150mmも深い水深走行性能を実現した。加えて、インテリジェント・トルク・ベクタリングの搭載により、従来の機械的なディファレンシャル・ロックと同じ機能を仮想的につくり出すことができる。

パワートレインだけでなくサウンド面でのトピックスがある。V8エンジンからインスピレーションを得たという「G-ROAR」を採用。Gクラスならではのドライビング・サウンドに加えて、「オーラ・サウンド」と「イベント・サウンド」が設定される。選択した運転プログラムに合わせて音が調整され、「コンフォート」では音の演出を抑え、「スポーツ」にするとパワフルでエモーショナルなサウンドが響くという。

航続距離は最大473km

搭載される高電圧リチウムイオン・バッテリーの容量は116kWhで、ラダーフレームに内蔵され、低重心化にも寄与。航続距離は、WLTP1基準で最大473kmとアナウンスされている。

充電は、普通充電の交流と急速充電の直流の両方に対応し、 ウォールボックスなどで交流で充電する場合は最大充電容量は11kWとなっている。また、最大200kWの充電容量を持つ急速充電システムが搭載され、10〜80%までにするために必要な急速充電時間は約32分となっている。

発売記念モデルもラインナップ

欧州では、カタログ・モデルのほかに、発売記念モデルである充実装備と専用デザインの「EDITION ONE」(エディション・ワン)を限定販売される。価格は、新型メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジーが約14万2621ユーロ〜(約2400万円)。エディション・ワンは19万2524ユーロ〜(約3230万円)とアナウンスされている。

現時点では、日本発売の時期などは不明だが、日本にも多くの熱烈なファンがいるGクラスだけに注目度は高くなりそうだ。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)