有給休暇は通常1日単位で取得しますが、労使協定を結ぶことにより時間単位で取得することが可能です。時間単位の年次有給休暇制度は、平成22年4月1日の改正労働基準法により、有給休暇を有効活用するために始まりました。時間単位の有給休暇は、会社・労働者どちらにもメリットがあります。   そこで今回は、時間単位の年次有給休暇制度の詳細と、メリット・デメリットについてご紹介します。

時間単位の年次有給休暇制度とは

時間単位の年次有給休暇制度とは、労使協定を結ぶことで年5日以内であれば有給休暇を時間単位で取得できるもので「労働基準法第39条第4項」で定められています。
 
現状、国内の年次有給休暇の平均取得率は62.1%となっており、さらに取得率を上げることが狙いです。なお、前年度から有給休暇の繰り越しがあったとしても、年間取得できる時間単位の有給休暇の日数は5日以内で変わりません。
 

年5日とは具体的に何時間のこと?

例えば、2時間分の有給休暇を時間単位で取得しても、丸々1日分有給休暇が減ってしまうことはありません。1日分の有給休暇が何時間にあたるかは、所定労働時間数で算出します。1日の所定労働時間が8時間なら8時間×5日で40時間分取得できる計算です。
 
もしも、時間単位で4時間ずつ有給休暇を取得すると、10回分となります。なお、所定労働時間が7時間30分の場合、切り上げて8時間にします。その結果こちらも8時間×5日で40時間取得可能です。
 

賃金はいくら支払われるのか?

賃金は、通常通りに1日分有給休暇を取得した場合と同様の計算方法です。以下の3つの方法の中から、就業規則に記載されている方法で算出します。
 

(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)標準報酬日額

 
実際の額がいくらになるか知りたい場合は、上司や経理担当者に確認してみましょう。
 

会社側のメリット・デメリット

会社側にとっては、時間単位の有給休暇制度を導入することで、社会に対し「積極的に働きやすい会社づくりに努めている」ことをアピールできます。
 
その結果、求人募集に対し応募者が増えることや、労働者の満足度が高まり離職者を減らす効果が期待できるでしょう。ただし、有給休暇の管理が煩雑になることも予想されます。管理しやすい勤怠管理システムの導入など、検討が必要になる可能性もあります。
 

労働者側のメリット・デメリット

労働者のメリットは、有給休暇を気軽に取りやすくなることです。数時間の用事に、1日有給休暇を取得することに負い目を感じることもあるかもしれませんが、数時間であれば社内に欠ける負担を最小限にできます。
 
しかし場合によっては、通常の有給休暇を取得しにくくなる可能性があります。有給休暇の本来の目的である「心身のリフレッシュ」ができなくなることも考えられるため、会社側が有給休暇取得を促進するように働きかける必要があるでしょう。
 

時間単位の年次有給休暇制度は、会社・労働者ともにメリットの多い制度

時間単位の年次有給制度とは、年5日以内であれば有給休暇を「時間単位で取得できる制度」のことです。時間単位の年次有給制度を導入することで、有給休暇の取得がしやすくなることや、働きやすい会社だというアピールになるなどのメリットもあります。
 
通常の有給休暇と効果的に使い分け、ワークライフバランスを実現させましょう。
 

出典

厚生労働省 労働基準法が改正されました
厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト時間単位の年次有給休暇制度とは
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況結果の概要1労働時間制度(4) 年次有給休暇 第5表 労働者1人平均年次有給休暇の取得状況(6ページ)
厚生労働省 改正労働基準法のあらまし3.年次有給休暇の時間単位付与(1)趣旨(3)改正のポイントⅱ)時間単位年休に支払われる賃金額(4)労使協定に規定する内容ⅱ)時間単位年休の日数ⅲ)時間単位年休1日の時間数(23〜25ページ)
デジタル庁e-GOV法令検索昭和二十二年法律第四十九号「労働基準法」(年次有給休暇)第三十九条
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー