東京の一等地にある巨大ビルをめぐり、戸惑いが広がっている。

24日、「イット!」取材班が向かってみると、フェンスが設置されシャッターが下りていた。

建物に近づいてみると、ガラスが茶色く汚れてしまっており、今は人が立ち入ることができなくなっている。

JR五反田駅近くのTOCビル。
かつては飲食店やアパレルショップなど多くの店が入っていた。

“廃墟”のようになっている理由は、二転三転した建て替え計画。
入居していた業者は困惑を隠せない。

新井家具店・十河順一さん「えーって感じ。(延期されるの知ってたら)間違いなくいたと思います」

今から54年前の1970年にオープンしたTOCビルは、都内最大級の商業施設として、多くの人でにぎわった。

しかし築50年以上たった2021年、30階建ての新しいビルに建て替えることを発表。

2024年3月までにテナントとして入っていた、すべての店などが退去した。

ところが閉館直後の4月9日、ビル側が突然、建て替えを9年ほど延期すると発表し、今の建物をリニューアルして再開させる考えを示した。

この発表に、立ち退いた業者は次のように話す。

新井家具店・十河順一さん「えーという感じで、びっくりした。『3月末までに退去を』という話だったので、建て替えるんだと全く疑っていなかった」

こちらの家具店は、約5年前にショールームを設けたが2024年1月に退去。
多額の費用がかかったほか、家賃も上がったという。

新井家具店・十河順一さん「最初からわかっていたら、ここに移ってくることもなかった。クーラー代に500万円くらいはかかっている」

ビル側は建て替えを延期した理由について、「昨今の建築費高騰、およびビル賃貸市況に鑑み、より高収益化を目指し計画の見直しを行うこととしました」としている。

不動産コンサルタントの長嶋修氏は、次のように見ている。

不動産コンサルタント・長嶋修さん「この3年余りで建築費は3割上昇している。今後さらなる人件費上昇が見込まれるので、当初の収益計画に見合わなくなってきた」

長嶋氏によると、工事費の上昇と人手不足で建て替えを延期するビルが増えるのではないかという。