「50代からの女性のための人生相談」は、専門家が読者のお悩みに答えるQ&A連載。今回は60歳女性の「書類の片付けができない」というお悩みに、生活研究家・消費生活アドバイザーの阿部絢子さんが回答します。
60歳女性の「書類の片付けができない」というお悩み
自分の部屋が片付きません。これから何が必要かも決められず、なかなか物を手放すことができません。必要なものと不必要なものの区別や判断ができません。特に書類関係です。
(60歳女性・MSさん)
阿部さんの回答:片付けをするにはきっかけがあるといい
「ペーパーレスの時代になった」といいますが、本当にそうなのでしょうか?
私は、紙のない暮らしを考えることができません。仕事でも、メールの連絡でも、大切な事柄は一度印刷して紙書類にし、それを読みながら返事を書いたり、文章にしたりしています。いまだに、自分は紙派であると自認しています。
私事ですが、もともと小さい頃から読書が好きで、紙が手元にないと落ち着かないといった、長年の習慣によるせいかもしれません。
近年では、電子書籍なども出現しましたが、電子文字での字間からの情景印象と、紙文字での印象は違うと思っています。
そのせいでしょうか。新聞や雑誌の記事など、メモ程度のごく小さな紙、仕事に関連した資料、これらを捨てることができません。特に一冊にまとまっている本は、読みかけや未読であっても片付けられずにいたのです。
ところが、東日本大震災が発生したとき、丈夫と思っていた相当重量のある本棚がほんの少し動いていたのに気が付きました。「これは、大変!地震で紙の下敷きになる!」といった恐怖に襲われ、一大決心をして、紙類の片付けに手を付けました。
こうした恐怖を感じたとき、あるいは紙に滑って転倒した、本の山につまずいて転びそうになったなどがきっかけとなり、紙類の片付けを実行できるのではないでしょうか。
でも、あれから10年。そう言っていた私は、またまた本を増やし始め、年齢も10年を経過し、「片付け年齢」が限界に近くなっているのが実情です。「このままでは、紙を残してはダメだ!」と再び思い立ち、最近、再度紙の片付けに挑戦し始めました。
紙類を片付ける際の4つのポイント
紙類の片付けをするには、以下の4つのポイントを押さえるのがおすすめです。
1:片付けをする場所を決める
いきなり片付けようと思ってもうまくいきません。まずは、片付ける場所を決めることです。といって、広い場所から始めると、途中で挫折しやすいのです。まずは狭い場所からにして。一度片付けがうまくいくと、次からはスムーズにできるはず。
2:片付ける本や書類は繰り返し選別
片付ける対象である本や書類は、一度で選別できない、と私は思います。選別に迷ったら、少し時間を置いて、もう一度選別します。何度も繰り返し選別することで、残す紙類が厳選されていきます。
3:体力温存、無理しない
片付けには体力が必要です。私は前回のとき、片付け終って数か月たち、腕が痛くなりました。今度はそんなことのないよう、ゆっくり、急がず、確実に片付けようと考えています。
4:選別して収めたからと片付けを終わらせない
書類、本、資料を選別し、所定の位置に収めたからといって、片付けが終わったわけではありません。書類や資料は活用し、本は読んでこそ、片付けが終わる、ということです。
「活用しない、読まない紙類は無用の長物」と私は戒めて、これからの人生の道連れとなる紙を残す、手元に置く、必要であると決め、今ゆっくりとですが、再紙類の片付けを実行しています。
回答者プロフィール:阿部絢子さん
あべ・あやこ 1945年、新潟県生まれ。生活研究家・消費生活アドバイザー。家事全般や食品の安全性の専門家として活躍。薬剤師の資格を持ち、今も現役で働いている。
構成=渡邊詩織(ハルメクWEB)