◆大相撲 ▽夏場所4日目(15日、東京・両国国技館)

 大関・琴桜が、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)に“56歳バースデー白星”をプレゼントした。西前頭2枚目・豪ノ山を土俵際からの逆転の上手投げで下した。初日の黒星発進から3連勝し、上位陣が苦しむ中、大関の一角が復調気配を示した。カド番の大関・霧島は痛恨の3敗目。大関・豊昇龍は2勝2敗の五分に戻した。無傷4連勝は平幕の宇良、御嶽海、湘南乃海、宝富士の4人。

 琴桜がしぶとさを見せた。左を差しきれず、突き押し自慢の豪ノ山の圧力に後退した。だが体の柔らかさと懐の深さを発揮。追い込まれた土俵際で生命線の左上手をつかむと、俵の上で左足一本を残しての投げで相手を腹ばいにさせた。

 辛勝だったが「いつもどおり集中してやった。土俵際は(豪ノ山が落ちるのが)見えてはいたので、あとは反応じゃないですかね」と冷静に振り返った。琴ノ若から改名し、祖父で元横綱の「琴桜」のしこ名を継いで初めて上がった土俵で黒星も、2日目から3連勝だ。

 この日は父で師匠の佐渡ケ嶽親方の56歳の誕生日。弟子たちはケーキで祝うのが恒例だが、白星という最高のプレゼントも届けた。これで特別な日は3年連続勝利。琴桜は「良かったんじゃないですか。(気合のノリは)変わらないです」と照れ隠しのように淡々と語った。一方、館内のテレビで見守った師匠は「(琴)勝峰も初日を出して(部屋の関取衆が)初めてそろって勝った。良かったです」と目を細めた。

 また、初日こそ勝利を意識するあまり硬さが見られたが、徐々に解消されていると分析した。師匠は「継いだら本人のものだから、私たちも普段から(以前の琴ノ若ではなく)“桜”と呼ぶようにしています。『自分は琴桜だ』という気持ちでいてほしいので」と“2代目”の意識に早く浸透するよう配慮。さらに結果を出し、偉大なしこ名をより自らのものにしていく。

 逆転劇に八角理事長(元横綱・北勝海)は「引っ張り込んでしまった」と指摘。ただ「15日間、完璧な相撲は取れない。良い方向に考えないと。ポジティブにね」と白星を拾う重要性も説いた。今後に向け「自分の相撲を取りきるだけ」と琴桜。上位が苦しむ中、看板力士の意地を見せる。(三須 慶太)