昨日カットされてしまったチーマ・コッピを最初の山岳に設定したセルヴァ・ディ・ヴァル・ガルデナからパッソ・ブロコンまでの159km難易度マックス山岳ステージ、上って下ってを5回繰り返す今大会最後の山頂フィニッシュ。オフィシャルスタートが切られると、少し様子見をしたあとでフィリッポ・フィオレッリとマルティン・マルチェルージ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)の2人が戦いの狼煙をあげた。

スタートから上りレイアウトで抜け出しと吸収を繰り返しながらチーマ・コッピをジュリオ・ペリツァーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が先頭通過、僅差でナイロ・キンタナ(モビスター)。38kmもある長い下りでジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)、ダヴィデ・バッレリーニ(アスタナカザクスタン)、アマヌエル・ゲブレイグザビエル(リドル・トレック)、ゲオルグ・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト)、マルコ・フリーゴ(イスラエル・プレミアテック)、ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)らが先頭グループを形成。

中間スプリントポイントはバッレリーニが先頭通過、メイン集団とのタイム差も1分開き、レースはようやく落ち着きを見せた。登坂距離20km近い1級山岳パッソ・ロッレに入るとメイン集団とのタイム差は2分半に。しかし山頂まで5kmというところdsmフィルメニッヒ・ポストNLが猛追、1級山岳もペリツァーリが先頭通過、2つの山だけで90ポイントを獲得し山岳賞2位へ浮上している。メイン集団は1分8秒後方から追いかける。

27kmの長い下りで雨が降り始め3級山岳でメイン集団が先頭グループを吸収した。山頂まで500mでゲブレイグザビエルがアタックし山頂を先頭通過、単身追いかけたシュタインハウザーが合流しインテルジロを先頭通過、2人でフィニッシュ地を目指す。パッソ・ブロコン山頂手前2.5kmでシュタインハウザーはゲブレイグザビエルを置き去りにして独走を開始、山頂を超え濡れた路面のダウンヒルを攻める。2度目のパッソ・ブロコンへは追走は43秒差、メイン集団とは2分36秒差で上り始めた。ペダルは緩むことなく淡々と踏み続け、背後ではポガチャルがアタックしていたが、ペースは崩さず山頂を目指し1分24秒のマージンを保ってフィニッシュラインを超えた。プロ初勝利がジロ・デ・イタリアという大舞台となった。メイン集団はタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が24秒ライバルたちに差をつけ区間2位。

「最高の勝利になった、ポガチャルが追って来てると知って最後の上りはハードにプッシュし続けるしかなかった」シュタインハウザー、ステージ勝利後インタビュー

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【ハイライト】ジロ・デ・イタリア 第17ステージ|Cycle*2024

ステージ順位
1 ゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ/EFエデュケーション・イージーポスト)in 4h 28' 51''
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)+ 01' 24''
3 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)+ 01' 42''
4 ゲラント・トーマス(イギリス/イネオス・グレナディアーズ),,
5 ダニエル・マルティネス(コロンビア/ボーラ・ハンスグローエ),,
6 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア/モビスター),,
7 ロマン・バルデ(フランス/dsmフィルメニッヒ・ポストNL),,
8 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 01' 55''
9 ヤン・ヒルト(チェコ/スーダル・クイックステップ),,
10 ラファウ・マイカ(ポーランド/UAEチームエミレーツ),,

個人総合順位
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)in 63h 31' 18''
2 ダニエル・マルティネス(コロンビア/ボーラ・ハンスグローエ)+ 07' 42''
3 ゲラント・トーマス(イギリス/イネオス・グレナディアーズ)+ 08' 04''
4 ベン・オコーナー(オーストラリア/デカトロン・AG2Rラモンディアル)+ 09' 47''
5 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)+ 10' 29''
6 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 11' 10''
7 ロマン・バルデ(フランス/dsmフィルメニッヒ・ポストNL)+ 12' 42''
8 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア/モビスター)+ 13' 33''
9 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 13' 52''
10 ヤン・ヒルト(チェコ/スーダル・クイックステップ)+ 14' 44''

ポイント賞
1 ジョナサン・ミラン(イタリア/リドル・トレック)284 Pts
2 カーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・ドゥクーニンク)175 Pts
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)113 Pts

山岳賞
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)230 Pts
2 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア/VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)148 Pts
3 ゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ/EFエデュケーション・イージーポスト)130 Pts

ヤングライダー賞
1 アントニオ・ティベーリ(イタリア/バーレーン・ヴィクトリアス)in 63h 41' 47''
2 テイメン・アレンスマン(オランダ/イネオス・グレナディアーズ)+ 00' 41''
3 フィリッポ・ザナ(イタリア/ジェイコ・アルウラー)+ 03' 23''

チーム総合順位
1 デカトロン・AG2Rラモンディアル(フランス)in 191h 22' 59''
2 イネオス・グレナディアーズ(イギリス)+ 16' 47''
3 UAEチームエミレーツ(アラブ首長国連邦)+ 34' 11''

リタイア
24 ダーフィット・デッケル(オランダ/アルケア・B&Bホテルズ)

5月23日(木) 第18ステージ
フィエラ・ディ・プリミエロ > パドヴァ
178 km(平坦 ★★☆☆☆/獲得標高 550 m)
ご褒美のような平坦ステージ

一旦アルプスを抜け出して、つかの間の平地を満喫する。数々の難関を乗り越えてきたスプリンターたちにとっては、ご褒美のようなステージ。3日後の最終スプリントのリハーサルも兼ねて、思いっきりトップスピードでもがきたい。

イタリア指折りの小さな自治体で……いわゆる東京ドーム約3個分程度のフィエラ・ディ・プリミエロから、下り基調でステージは走り出す。17.6km地点で小さな4級山岳を終えれば、もはや目立つ難所は存在しない。総合系チームは静かな1日を望み、スプリンターチームはセオリーに則って、集団牽引に勤しむのだろう。

大会序盤からこつこつ小さな副賞ポイントを貯めてきた選手たちにとっては、つまり絶好の機会。フーガ賞や中間ポイント賞、さらにはインテルジロ賞の上位勢が、逃げを盛り上げてくれるはずだ。

1つ目の中間ポイント前後に小さな起伏が2つ隠れているけれど、普通の状態であれば、平地巧者の邪魔にはならない。道が完全にフラットとなり、直線と直角のみで描かれるラスト80kmは強風も指摘されるが、油断さえしなければスプリンターを罠にはめるほどではない。

敵はむしろ、これまでの17日間で蓄積してきた疲労。また開幕時に比べてスプリンターの数も大幅に減っているに違いなく、自ずと集団牽引に加わるチームの数も多くはない。だからこそ3週目の平坦ステージでは、時に2022年や2019年の第18ステージのように、衝撃的な逃げ切り勝利も生まれる。もしくは2020年の第19ステージのように、ど平坦にも関わらずプロトンは追走を完全に放棄し、のんびりと1日を終える場合も。

果たしてこの日のパドヴァでは、どんな結末が待ち受けているのか。ラスト1kmには、直角カーブが2つ潜んでいる。

ステージ詳細テキスト:宮本あさか