5月26日(日)に東京競馬場で行われる第91回日本ダービー(3歳牡牝・GI・芝2400m)。3歳馬7,730頭の頂点を決める注目の一戦を目前に控え、世には血統や調教、陣営情報が多く飛び交っている。そんな中、当記事では一般的な予想ファクターとは異なった視点から日本ダービーを紐解いていきたい。今回は“夏季五輪開催年”の日本ダービーについて。

 32競技329種目の世界チャンピオンをめぐる熱い戦いが、7月26日から8月11日に繰り広げられる。今年の舞台はフランス・パリ。パリといえば日本のホースマンの悲願、凱旋門賞が行われる地。そうした縁もあり、例年以上に“五輪と競馬”は注目したいところだ。

 競馬界では「夏季五輪開催年は名馬が誕生する」は定説として定着しつつあるが、一体どんな馬たちが羽ばたいたのか。振り返ってみる。

【五輪開催年に誕生した主な名馬たちのダービー】
1964年(東京大会):シンザン(戦後初の三冠馬)
1984年(ロサンゼルス大会):シンボリルドルフ(史上初の無敗三冠馬)
1992年(バルセロナ大会):ミホノブルボン(無敗二冠馬)
2004年(アテネ大会):キングカメハメハ(NHKマイルCと日本ダービーの変則二冠、当時のレースレコード更新)
2008年(北京大会):ディープスカイ(NHKマイルCと日本ダービーの変則二冠)
※2020年(東京大会):コントレイル(無敗三冠馬)

※新型コロナウイルスの世界的流行の影響で2021年に延期。

 挙げれば枚挙にいとまがないが、上記のように数多くの名馬がダービー馬となり、記録にも記憶にも残る成績を残してきた。この名だたる名馬たちの活躍が、夏季五輪開催年に集中している点は偶然とは言い難い。また、開催延期となってしまったものの東京五輪が行われる予定だった2020年のコントレイルを含めると「五輪開催年(うるう年)のダービーに、無敗の皐月賞馬が参戦したら勝つ」というデータも見えてくる。

 今年に目をやると、ジャスティンミラノの無敗二冠に期待がかかる。同馬は史上最少キャリアでの皐月賞制覇を果たした。そして勝ちタイムの1分57秒1はレースレコード。すでに名馬の予感を感じさせる大器である。また、上記の馬たち全馬が1番人気で本番を迎えており、ジャスティンミラノも24日夜時点でのオッズでは1番人気。もう一頭、すでにGIを勝っているのがレガレイラ。こちらの“二冠”に注目して見てもいいかもしれない。

 と、ここまで続けてきたが、“2024年の五輪と競馬”という視点で見ると“あるサイン”が見えてくる。

 先述した通り、今年の開催地はフランス。今年の出走馬の中には開催地・フランスの生産馬で、名門・矢作厩舎が管理するシンエンペラーがいる。同馬は20年凱旋門賞馬ソットサス(Sottosass)の全弟で、今年の凱旋門賞に予備登録を発表している。前走の皐月賞では5着と前述のジャスティンミラノに後塵を拝しているが、新馬勝ちをしている東京コースに替わることで逆転の期待がかかる。また、長い日本ダービー史上で外国産馬の優勝は一度もないが、数々の歴史を作ってきた“世界のYAHAGI”がその前例を打ち破り、正真正銘の“記憶にも記録にも残る”レースを見せてくれるのではないか。

 競馬の祭典・日本ダービーで、スポーツの祭典・五輪での日本選手団の活躍の如く、世代の頂点に昇り詰める馬は一体どの馬か。5月26日15時40分、戦いの火ぶたが切られる。