第1回目の連載では、2025年3月末までに、原則すべてのEC加盟店の導入が求められている「EMV3-Dセキュア2.0(以下、EMV3-DS)」について、EC業界全体の導入率は、20〜30%程度のだと報じた。導入が進まない背景に、「EMV3-DSを導入するとかご落ちが発生する」と言われていることがあるようだ。実際に、「EMV3-DS」によってワンタイムパスワードが表示された顧客の内、10~30%がかご落ちしてしまうというケースもあるようだ。ただ、かご落ちのリスクが高い商材は一部であり、かご落ちがほとんど発生しない事業者もいるという。かご落ちが発生するリスクよりも、不正注文のリスクを除外することで得られるメリットが大きいという意見もある。


<PSPは加盟店に連絡>
決済代行会社(PSP)やカート事業者各社は、加盟店のEC事業者に対して、「EMV3-DS」の導入について、適切な情報の周知を行っている。DGフィナンシャルテクノロジーでは、オンライン決済代行システムの管理画面上で、「EMV3-DS」について情報を掲載したり、営業担当者が加盟店に電話で連絡したりしているという。

GMOペイメントゲートウェイでは、毎月ウェビナーを開催。「EMV3-DS」を導入する目的や、メリットについて、ウェビナーで伝えているという。ウェビナーでは、「かご落ちのリスクや、導入にかかる開発コストがかかるとしても、チャージバックを回避して得られるメリットの方が大きい」などといったことを説明しているという。

DGフィナンシャルテクノロジーによると、「EMV3-DS」に関して寄せられる問い合わせの中には、ECサイトの構築を行ったベンダーが倒産や廃業したりして、追加の開発を行えず、「EMV3-DS」を導入できないというケースもあるという。中小規模のECサイトで、「EC-CUBE」などのオープンソースを使って構築しているケースでは、そうしたケースも少なくないとしている。


<転売可能な商品はリスク>
「EMV3-DS」によって発生するかご落ち率は、商材によって異なるが、かご落ちのリスクがかなり高いケースもあれば、ほとんど発生しないというケースもあるようだ。

DGフィナンシャルテクノロジーによると、チケットや家電といった、転売されやすい商材を扱うECサイトでは、利用するユーザーのネットリテラシーが高くない場合も少なくないという。たまにしかECを利用しないようなユーザーが多いECサイトでは、ワンタイムパスワードを表示するケースも多くなり、結果的に、かご落ちしてしまうユーザーが増えてしまうというケースもあるようだ。

一方で、かご落ち率が高くない商材も多い。健康食品や化粧品といった定期購入を行う主流のリピート通販では、オーソリを行うのが初回の決済だけになるため、2回目以降の支払いにはかご落ちは発生しない。リピート通販でのかご落ち率の発生は低いと考えられるという。

 


■<第1回>2024年4月時点で対応済みは3割か 今後ベンダーに開発が集中のおそれ
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■<第3回>本紙独自調査!EMV3ーDS対応済みは42%
https://netkeizai.com/articles/detail/11701