乗用車メーカー7社の2025年3月期連結業績予想は、営業利益の合計が前期比11・7%減の7兆6600億円となり4期ぶりの減益を見込む。生産・販売台数は総じて24年3月期を上回るものの、各社が電動化など成長分野への投資やサプライヤー支援を積み増しているのが特徴だ。持続的な成長に向けて、競争力の底上げを図る。(3回連載)

乗用車7社の営業利益合計額

トヨタ自動車は25年3月期に人的資本への投資(3800億円)やモビリティーカンパニーへの変革に向けた投資(1兆7000億円)など合計2兆円の投資を計画する。「仕入れ先や販売店と一緒に足場固めを進め、仕事のやり方を変える」(佐藤恒治社長)とし、24年3月期に構築した収益構造を維持した上で自動車産業全体への波及を目指す。

日産自動車は営業利益段階でインフレ影響により1000億円のマイナスを見込む。社内費用に加え、サプライヤーの負担額も費用に計上する。内田誠社長は「サプライヤーとともに成長していきたい」とする。

ホンダは研究開発支出で過去最高の1兆1900億円を投じる。稼ぐ力を高め、創出した資金を電動化や知能化に向けた研究に充てる。「技術の手の内化」(三部敏宏社長)を進め、電池を中心とした電動車の垂直統合型の事業基盤確立を目指す。

乗用車7社の2025年3月期の営業利益予想

スズキは設備投資で24年3月期比24・4%増の4000億円、研究開発費で同11・0%増の2600億円を計画。成長をけん引するインド工場への投資のほか、電動化やデジタル変革(DX)などの研究投資を拡大し、成長に向けた種まきを進める。三菱自動車も設備投資で同6・8%増の1000億円、研究開発費で同9・1%増の1250億円とそれぞれ積み増す。SUBARU(スバル)も今後の商品ラインアップの強化に向けて、研究開発支出で同18・7%増の1550億円を計画する。

投資の原資となる自動車の販売状況は総じて増加傾向にある。トヨタは北米やアジアでの拡販を見込む。日産はグローバルで新型車が販売をけん引。ホンダは日本や北米での増加を予想する。スズキはインドで市場成長率を上回る伸びを期待する。

乗用車7社の2025年3月期 4輪車生産・販売台数(千台)

マツダは高付加価値の戦略商品「ラージ商品群」の増販で初の年60万台を目指す北米を中心に「意欲的な成長を目指す」(毛籠勝弘社長)。スバルは米国市場で前期を上回り、過去最高水準の継続達成に向け取り組む。三菱自動車は成長市場と位置付ける東南アジア諸国連合(ASEAN)での販売が好調とした上で「まだ物足りない。強化していく」(加藤隆雄社長)方針だ。

一方、グローバルでみて苦境にあるのが中国市場だ。現地企業など新エネルギー車(NEV)の攻勢で、日系各社が劣勢に立たされている。ホンダは24年末以降にEVの新シリーズ「燁(イエ)シリーズ」を展開して反転につなげる。日産も中国市場向けの新車開発を継続し、NEVの生産も開始する。トヨタの宮崎洋一副社長は「当面はしのぐ年」とし、価格競争に巻き込まれないモデルを中心に将来の成長に向けた布石を打っていく。


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