「浪花のモーツァルト」こと、作曲家キダ・タロー(本名・木田太良=きだ・たろう)さんが14日午前6時13分、大阪府内の自宅で亡くなった。15日、所属事務所が発表した。93歳だった。

在阪テレビ各局のテーマソングや「かに道楽」などのCMソング、坂田利夫さんの出ばやしなど実に数千曲を手がけ、毒舌トークも人気だった。葬儀・告別式は、キダさんの意向もあって、近親者のみでこの日、終えた。

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◆浪花のモーツァルト おなじみになったキダさんの愛称。これはABCテレビ「探偵!ナイトスクープ」(1988年3月放送スタート)を立ち上げた松本修プロデューサー(当時)が、キダ氏にささげたもの。当時、モーツァルトの「アンネクライネナハトムジーク」の一節を松本氏が口で演奏しながら、いかにキダさんが「なにわのモーツァルト」にふさわしいかを日刊スポーツの記者に力説した。

ただし、キダ氏本人は「わし、モーツァルトよりもショパンが好きやねん。あの繊細さ、あのピアノのタッチ。ほんまは『なにわのショパン』になるはずやった」と話していた。

◆ABCヤングリクエスト 1966〜86年まで深夜のラジオファンに愛された伝説の番組。お笑いとバラエティー色が強かったライバルのMBSヤングタウンとは対照的に、落ち着いたトークと歌謡曲、洋楽などのレコードを連日かけていた。その番組内の人気コーナー、「ミキサー完備スタジオ貸します」がキダさんの担当で、アマチュア歌手がプロの機材を使って演奏。キダさんがプロの視点から助言していた。まだアマチュアでプロを目指していた円広志は常連でもあった。またヤンリクのテーマ曲もキダさんの作品で、初代の歌手は奥村チヨ。

◆アホの坂田 大阪の人気漫才師コメディNo.1(前田五郎、坂田利夫)が1972年に歌ったヒット曲。「メキシカン・ハット・ダンス」と呼ばれる民謡をベースに、キダさんが世に広めた。「アホ、アホ、アホの坂田…」で始まる同曲のインパクトはすさまじく、関西では大ヒット。しかし「生徒の坂田さんがいじめられる」「坂田先生が困っている」と教育問題に発展、放送自粛になった。

◆番組のテーマ曲&CMソング キダさんが手広く手がけたのがテレビ番組のテーマソングとCMソングだった。テレビでは「プロポーズ大作戦」「ラブアタック!」「2時のワイドショー」など記憶に残るフレーズは数多い。CMでは「日清出前一丁」「日清やきそば」「かに道楽」「有馬兵衛向陽閣」などが有名。

◆ヒット曲 前述の「アホの坂田」以外にも、北原謙二「ふるさとのはなしをしよう」や笑福亭仁鶴「大阪は第二の故郷」などが知られる。

◆ラジオ・パーソナリティー ABCラジオ「フレッシュ9時半!キダ・タローです」は1973年6月〜89年3月まで放送された。毎日さまざまなゲストを招いてのトークが人気。時には歯に衣(きぬ)着せぬ物言いをズバリ、という場面も。男性アイドル歌手を次々生み出していたジャニーズ事務所(当時)について、キダさんは「少年隊から後は、礼儀正しさが徹底されていた」と話していた。