<プロボクシング:WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京ドーム

WBA世界バンタム級王者井上拓真(28=大橋)が同級1位石田匠(32=井岡)を3−0で判定で下し、2度目の防衛を飾った。初回にダウンを喫したが、ひるまず最後まで攻め続け、2人のジャッジが9点差の大差判定で完勝した

1回に石田の左ジャブをアゴに受け、ダウンを奪われた。相手の身長は10センチ高く、リーチは14センチ長い。ダウンの恐怖心で受け身に回れば、致命的な差になる。だからこそ、スピードある出入りでジャブ、アッパーなどを打ち続けた。「そこ(ダウンの後)から冷静に組み立てて挽回できた」と勝因を分析した。

2月24日の前戦の初防衛戦から異例の2カ月半の短期間。当初は昨年11月に初防衛戦を予定も、スパーリング中に肋骨(ろっこつ)を骨折。試合は延期されたが、その時点で今回の東京ドームでのビッグ興行の話は浮上。父真吾トレーナーと話し合い「(2月と今回の)2試合をセットでやる」と、目標の兄と同じ東京ドームのリングに立つ決意を固めた。

一から出直すため、1月には真吾氏と2人で、数年ぶりにスパーリングの動画を見直した。スピードある出入り、右のカウンターなど、自分の武器を再確認。2月の元V9王者アンカハス戦では強烈な右ボディーアッパーで9回KO勝利と世界戦では初のKO劇につなげた。その1週間後にはジムワークを再開。「前回の試合で仕上げたままやっているのですごく状態は良い」。最高の形で兄尚弥にバトンを渡し、井上家初の兄弟同時防衛成功への勢いをつけた。【田口潤】

◆井上拓真(いのうえ・たくま)1995年(平7)12月26日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏と兄尚弥の影響で4歳からボクシングを始める。高校2冠後、13年12月にプロデビューし、福原辰弥に判定勝利。15年7月に東洋太平洋スーパーフライ級王座を獲得。18年12月にWBC世界バンタム級暫定王座奪取も、19年11月に正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に敗れて王座陥落。21年にWBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級王座、日本同級王座を獲得。23年4月、WBA世界バンタム級王座獲得し1度防衛。身長163センチの右ボクサーファイター。

◆国内の同時兄弟防衛 亀田兄弟は13年12月、三男和毅がWBOバンタム級王座の初防衛に成功。IBFスーパーフライ級王者の次男大毅がWBA同級王者ソリス(ベネズエラ)と統一戦に臨み、判定負け。しかし前日計量に失敗したソリスが王座剥奪されており、IBF独自ルールで初防衛と認定。不可解な判定に国内で騒動となった。重岡兄弟は昨年10月、兄優大がWBCミニマム級王座統一戦、弟銀次朗もIBF同級王座統一戦に勝利し、兄弟同時防衛に成功。