大相撲の音羽山親方(38=元横綱鶴竜)が、かつての兄弟弟子から、師弟関係となって最初の本場所に臨む、大関霧島のかど番脱出に太鼓判を押した。

7日、東京・両国国技館の相撲教習所で行われた、所属する時津風一門の連合稽古に師弟で参加。夏場所(12日初日、東京・両国国技館)を2度目のかど番で迎える霧島が、23勝2敗と好調を示したことに「稽古始めと比べたら、やっと、日に日に良くなってきた」と、復調にひと安心した様子だった。かど番脱出については「気持ちがしっかりしていけば大丈夫」と、心配していなかった。

音羽山親方が現役時代の最後は、霧島と同じ陸奥部屋に所属していた。引退後も陸奥部屋の部屋付き親方として霧島を指導していたが、昨年末に音羽山部屋を創設、独立していた。その後、4月2日に陸奥親方(元大関霧島)が定年を迎えたことによる部屋閉鎖に伴い、霧島が音羽山部屋に転籍してきて、師弟関係となった。

霧島は先場所で首を痛めており、この日は左肩にテーピングを施していた。音羽山親方は「少し筋肉が突っ張っていたので(テーピングは)念のため」と説明。首と左肩の関連については「首からきているものかと心配したけど、治療してもらったら『首ではない』ということで、本人も安心していた」と説明し、首は師弟ともに気にならない状態にまで復調しているという。

この日、好調だった霧島だが、大栄翔に2敗目を喫した直後に、音羽山親方は呼び止めてアドバイスを送っていた。「あの相撲だけじゃなくて、その前から『半身になっている』『左ばかりで攻めているから右も使って』ということを伝えた。昔から半身になる癖があったので」と、相手に力を伝えきれない体勢の修正を求めた。するとそこから、霧島は13連勝締め。効果てきめんだった。

数日前までの出稽古では調子が上がらず、番数もこなせていなかったが、上々の内容へと復調した。優勝争いに絡むことも期待されるが、音羽山親方は「いやいやいや。まだ本場所が始まってみないと分からない。稽古場と本場所は違うから」と、慎重な姿勢だ。

何よりも周囲が優勝を期待してしまうと、本人に重圧をかけてしまうことは、横綱時代の自身が身をもって知っている。だからこそ「今場所は『まず8番』という気持ちで行った方がいいと思う。それは本人にも、言おうと思っている」という。高い目標を立てることなく、勝ち越しで構わないと、自身が率先してかつての弟弟子に伝えるつもりだ。ノビノビと取った方が力を発揮すると知っている、かつての兄弟子の指導は、随所に優しさがにじみ出ていた。