ーー無差別への挑戦は、竹下幸之介(KONOSUKE TAKESHITA)選手が王者時代の2017年4月に「いつでもどこでも挑戦権」を行使したのが最後です。「いつどこ」を使った挑戦は、通常の挑戦とは違いますか?

「違います。この時の『いつどこ』での挑戦は、無差別を獲りたいというより、どちらかと言うと天才・竹下幸之介とシングルしたことがなかったので、竹下とシングルしたい、リングで会話したいと思っての挑戦だったので。そこにたまたま無差別に挑戦できる理由付けがあって。だから、ホントに無差別獲ろうと思って挑戦したのは2014年4月、KUDOさんに挑戦したのが最後ですね」

ーータイミングの問題もあったでしょうが、それ以降、自分から無差別挑戦に行こうと思ったことはなかったですか?

「1回もないですね。自分から行こうと思ったのは、その挑戦が最後で、挑戦者決定戦とかにも1回も出てないはずなんで」

ーー無差別より、EXTREMEで自分の価値観を光らせたい思いが強かったですか?

「僕はEXTREMEがすごい好きで。理由はいくつかあって、そもそも男色ディーノというレスラーに憧れてDDTに入って。その男色さんから初めて勝って、初めて獲ったベルトがEXTREMEだったというのもあるし。やはりEXTREMEってDDTならではのベルトだった。自分でルール決めて、自分で方向性決められるベルトって、なかなか他団体ではなくて。他団体の一番を決めるベルトはいくつもある。各団体に一個ある。それってらしさでも何でもないと思ってて。DDTならではのベルトは僕のなかではEXTREMEで、EXTREMEは制限されることなく、自分の表現をできるベルト。無差別はチャンピオンになることで、一番格上のベルトだから、自分の表現を制限されるタイミングってあるんですよ。だからあまりそこに魅力を感じてなくて。らしさを出せるベルトにこだわってて、EXTREMEに愛情を持ってたんです」

ーー今回は相手の希望で無差別に挑むことになったんですが、実質10年ぶりの挑戦というのはどんな感じですか?

「正直無差別に一生挑戦することはないと思ってたんで、こういうタイミングがない限りは、このタイミングで挑戦することになるんだ、回ってくるんだ、こんなのがって正直思いました。僕には一生縁がないと思ってたのに、来るんだって感じですね。ただそこに気負いとか全くなくて、今UNIVERSALとか別のベルトも増えてますけど、EXTREMEに挑戦する時と気持ちは変わらないですよ。昔はもう少し気負ってたと思うんですけど、僕はEXTREMEが無差別に並ぶ象徴するオンリーワンのベルトと思ってるんで。それに挑戦する時と同じ心持ちというか、無差別だからって気負うことはないです」

ーー3回前哨戦があって、勝ち負けはともかく、“削り合い”という発言がありました。タイトル戦で勝つために削らないといけないですか?

「ホントにそうだと思ってて。お客さんから見た前哨戦は期待値を高めるというか、よりタイトル戦に向けて気持ちを入れられる、感情を上げられるための前哨戦、楽しむための前哨戦と思ってる。選手としては、前哨戦見た時に、気持ちを盛り上げていくとかじゃない。むしろそんなこと言って前哨戦に臨んでるヤツ、正直クソ食らえと思ってて。そうじゃないじゃんって。挑戦するって決まった時点で、気持ち高まってるんだから。まだそこで高まってない状態で前哨戦してるって、ホントに挑戦する気あるの?という話になってくるし。お互いどんな引き出しがあったとか、相手にいかにダメージ与えて自分がタイトル戦で勝てるように運ぶんだとか、そういう駆け引きだと思ってる。体だけでなくメンタルもそうだし、心と体の両方の削り合いだと思ってる。もちろんお客さんに見せる分には、パフォーマンスとして素晴らしい前哨戦を見せなきゃいけないけど、一選手としての戦いとしてはそうじゃないでしょ、前哨戦ってと思うんです。格闘技に前哨戦あるかってないわけで。プロレスならではのものだと思ってて。そこでどう前哨戦を戦うかということを、チャンピオンの上野君はもっと考えた方がいいよって。と思って戦ってたのはあります」

ーー上野選手の足にマトを絞ってダメージ与えました。その意味で前哨戦の意味はありましたか?

「足はもちろん攻めますけど、よっぽど深手を負わない限り、1週間後に残るダメージってなかなかない。何が大事かって、前哨戦でメンタル揺さぶるのが大事かって思ってた部分があるんで。割と上野君の今までの防衛ロードを見てると、相手と対等、もしくは上野君の手玉に取られてることが多い。彼の思う前哨戦をやってたと思ってて。だけど、僕はそれをさせてないと思ってて。その時点で前哨戦の点では、優位なのかなと思ってます」

ーー心理戦を仕掛けて、彰人選手に有利という手応えはありましたか?

「まだ彼は自分らしさを保とうというか、タイトルマッチだけじゃなく前哨戦も、彼はまだ僕が殻を破ってないというかもしれないけど、逆だと思ってて。上野君がもっと出したことない上野勇希を出してきなよと思ってて。まだあなたの心の奥底にあるものがあるでしょって」