【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

13年間のみちのくプロレスでのレスラー活動に区切りをつけ、新たな戦場を求めたMUSASHI。いくつかの団体、様々なマットを体験し選んだのは全日本プロレスを主戦場とすることだった。

謙虚な男だが、リングの話となるとヒートアップ。ジュニア戦士として「デカイ選手を倒したい」と明言。ヘビー級どころかスーパーヘビー級戦士が揃った王道マットをあえて選択したという。

「やりたい選手がたくさんいる。斉藤兄弟、綾部蓮、諏訪魔…色んな作戦を立てるのが楽しい」とニヤリ。大型選手の動きを読み、かく乱し勝機を見出す。柔よく剛を制す。ジュニアだからこその醍醐味がある。

もちろん、ジュニア戦線にも腕を撫している。世界ジュニアヘビー級王者・ライジングHAYATOに挑戦したもののベルト奪取に失敗したがリベンジを誓っている。現在欠場中の青柳亮生も気になる存在だ。

「ジュニアもヘビーも様々なレスラーが揃っている。無差別に暴れたい俺にとって、最高の舞台」とズバリ。全日本のリングこそ理想の戦場なのだ。

しかも、世代闘争が熱いのも願ったりかなったり。三冠王者・安齊勇馬を中心に、本田竜輝、HAYATO、田村男児、井上凌ら20代世代が「新時代」を唱え、オーバー40の諏訪魔らベテラン世代を煽りまくっている。

20歳代と40歳代のはざまの30歳代であるMUSASHI(33歳)は、宮原健斗(35歳)が「一番、やりあいたい相手であり、一緒に頑張りたい人でもある」とキッパリ。

キャリア16年の宮原、MUSASHIは14年目。年齢もキャリアもレスラーとして脂が乗る時期だ。「もちろん、実績ではかなわないけど、同世代の目標でありターゲットであり、勝手に同士だと思っている」と熱い。

5・29東京・後楽園ホール大会で、三冠王者・安齊に挑む宮原の王座奪還に、誰よりも注目し期待しているMUSASHIなのだ。

みちのく(青森県、岩手県、宮城県、福島県、MUSASHIは岩手県出身)から「むさしの国(東京都、埼玉県、神奈川県の一部)」に移住してまだ数か月。「人混みが苦手で」と住環境の変化に戸惑いを隠せない。「スカイツリー(634メートル)にもまだ行ってない」と苦笑い。

2018年のメキシコ遠征からMUSASHIのリングネームとなった。テングとどっちにするか、かなり迷ったというが、むさしの国に新天地を求める運命だったのだ。

10歳でテレビ観戦したプロレスにはまった。対戦相手を血だるまにしたグレート・ムタに震え、初の生観戦は13歳の時。全日本の岩手・盛岡大会だった。「入場から退場まで、プロレスラーの魅力に魅了された。中でもカズ・ハヤシさんのすべてが格好良かった」と振り返る。その後、野橋太郎、秋山準を目にし「俺もレスラーになる」と決意を固めた。

宮原との絡みに加え、同い年のT-Hawkとの対戦、みちのくとのお別れマッチで敗れたDOUKIとのリベンジマッチが現在の目標だ。

真面目で優しく、実直な常識人だがリング上では大暴れ。そのギャップが魅力だ。そして「彼女募集中です」と、はにかんだ笑顔。ベルトも彼女も手に入れる。リング上もプライベートも、むさしの国で充実させたいと目を輝かせる。

昨今、多くのレスラーが口にする「俺から目を離すな」というフレーズを、6年前から言い出していた。「俺が元祖だと思う」と力強いMUSASHIの新天地での大暴れが楽しみだ。