AFCチャンピオンズリーグ決勝は25日に2ndレグが行われ、ホームで2-1と先勝した横浜F・マリノスがアル・アインFCと対戦し、1-5で敗戦。トータルスコア3-6で初優勝を逃した。

勝つしかないアル・アインは、開始早々の8分にエースのソフィアン・ラヒミが先制点を奪うと、33分にはラヒミがPKを獲得。このPKをカクが冷静に決めてトータルスコアをひっくり返す。

ただF・マリノスも黙っておらず、40分にヤン・マテウスがゴールを奪ってトータルスコアは3-3のタイに。しかし、アル・アインは67分にラヒミ、91分と95分にコジョ・ラバが追加点を奪い、F・マリノスを撃沈。内容的にも完敗だった。



ターニングポイントは、前半のアディショナルタイムだったと考える。

ディフェンダーの背後を取り、キーパーとの1対1の状況を作ったラヒミの対応のために前に出てきたポープ・ウィリアムがラヒミを倒したとして決定機阻止で一発退場となり、白坂楓馬が投入される。ただその白坂が安定しなかった。

67分のラヒミに奪われたゴールも、ニアをしっかりと締めておけば防げた失点であり、91分の失点も白坂の対応ミスによっての失点である。キックの質もなかなか定まらずに苦戦。いきなりの出番で緊張はあったはずではあるが、安定したプレーを求められていた中でのこの結果は、本人にとっても失意であったに違いない。

横浜F・マリノスはこの日、チーム全体としても良い印象がなかった。とりわけ悪目立ちしたのが、守備面での連携ミスだ。例として先制されたシーンを取り上げる。

畠中槙之輔のクリアのこぼれ球を拾ったヤヒア・ナデルがダイレクトで左サイドに流れたラヒミへ。ラヒミが前へ運んだ時、状況的には4対4の形。その後ラヒミがスピードに乗ってボールを運ぶと、ペナルティエリアの手前まで来たところで真ん中を突っ切ってナデルが入り込んでくる。

それを見たラヒミは中へ行くそぶりをする。ラヒミを見ていた畠中と上島拓巳は2人で前を塞いでいたため、横から入ってきているナデルには気づかず。ナデルにずっと付いて走っていた喜田拓也はパラシオスが来ているのを見てスピードを緩めた。

しかし、ここは付いていくか、上島と畠中に声をかけておき、どちらか1人にコースを絞らせてラヒミにそのままシュートを打たせ、ポープに止めてもらうという策も一つであった。

結果的にフリーでナデルがボールを受けるが、ここでポープが間合いを詰める。この判断はナデルのシュートの選択肢を消すという意味では正しかったと考える。ただパスを受けたラヒミがナデルの後ろに走り込んでいたため、ヒールで落としたナデルのボールをラヒミが合わせて点を取られる。



ナデルにボールが渡り、ラヒミがゴールを決めるまでのこの一瞬の間、畠中と上島の足は完全に止まっていた。ここで付いていけていたら防げていたかもしれない失点であったため、かなり勿体なく感じた。

薄れゆく選手層…補強が必須なポジション



この試合のF・マリノスは、アンジェ・ポステコグルー体制で使っていたハイラインを取り入れてカウンターを阻止しようとしたが、これが逆に仇となった。スピードのあるラヒミは抜け出しのタイミングが抜群に良く、背後に走られて何度もチャンスを作られかけた。

なぜ、現在の指揮官であるハリー・キューウェルとポステコグルーのハイラインがここまで違うのか。それは、上島と畠中が背後への対応に余裕が持てるほどのスピードを兼ね備えた選手ではないからだ。

ポスデコグルー体制の時、センターバックには強靭なフィジカルと爆発的なスピードがあるチアゴ・マルチンスがいた。しかしそのようなタイプがいない今、ハイラインの戦法をとっても逆に相手にチャンスを与えるだけなのだ。

ここはキューウェル監督の采配ミスと言っていい。ハイラインを取り入れるなら、夏の移籍市場ではセンターバックの獲得が必須である。



攻撃は自慢のブラジル人三銃士を使うも、アンデルソン・ロペスは封じ込まれ、エウベルはバンダル・アルアフバビの前に仕事をさせてもらえず。唯一怖さを見せたのは、切れ味のあるドリブルでゴールも奪ったヤン・マテウスのみ。

インサイドハーフで攻撃の中枢の役割を期待された植中朝日も存在感がなく、自慢の攻撃陣は鳴りを顰めた。後半はポープの退場で10人になっていたとはいえ、アディショナルタイムにロペスが作った決定機以外に攻撃のチャンスがなく、実力の差を見せつけられた。

攻撃陣は優勝した2022シーズンから選手層が薄くなっており、夏にロペスの控えのFW、ウイングの補強がここも必須である。

交代の使い方も良くなかった。63分の喜田の交代に驚いた人は少なくなかっただろう。チームを鼓舞する彼の存在はこの試合において大きなものであった。

喜田の交代以降、副キャプテンである松原健やエドゥアルド、最後尾から支える白坂からの鼓舞の声が飛ばず、チームの雰囲気もあまり良くはなかった。このような状況でこそ声を掛け合い、意識を高め合うべきであった。こうした細かなところにも、アル・アインとの大きな差があったのかもしれない。

そうした中で、敵地UAEでチケットトラブルに見舞われながらも声援を送り続けたサポーターの姿は心打たれるものがあった。4点ビハインドになっても諦めずに声援を送り続ける姿は選手としても大きな活力にはなったはずであり、それは試合後の喜田の言葉にもサポーターへの感謝の言葉にも表されていた。



優勝はできず涙を流すサポーターも多く見受けられたが、諦めず応援する姿は素晴らしいものだった。

アジアの壁は高く、実力不足を思い知らされる結果となったF・マリノス。ただ下を向いている暇はなく、29日にはすぐ柏レイソルとのリーグ戦があり、9月から新フォーマットで開催されるACLエリートが始まる。

今回の悔しさを糧に、残った試合は是非奮起してもらいたい。